英国警察が大規模な取り締まり体制の強化を発表
英国政府は、年間1000億ポンド以上の規模に達すると推定されるマネーロンダリング(資金洗浄)や経済犯罪に対抗するため、大規模な取り締まり体制の強化を発表した。
経済犯罪対策の課徴金を財源として今後3年間で5億ポンド(約1,047億円)の予算を投じ、新たに500人の専門捜査官を増員するという。今回の取り組みは、警察、NCA(国家犯罪対策庁)、CPS(検察局)が密に連携し、国内外の複雑化する金融犯罪ネットワークの摘発と犯罪収益の回収を目指すものだ。
巧妙化する金融犯罪と暗号資産の影
英国内務省や関係機関の報告によると、犯罪手口は近年、フィンテックの普及やAI(人工知能)、そして暗号資産の台頭によって一段と複雑化・高度化している。
政府が掲げる5億ポンドの予算および500人の増員計画において、すべての人員がブロックチェーンやデジタル資産の捜査に特化しているわけではない。しかし、現金や銀行口座、法人組織などと並び、暗号資産は不正資金の移動手段として重要な位置を占めている。
実際に、NCAが主導したロシア語圏のネットワークを狙ったOperation Destabilise(オペレーション・デスタビライズ)では、組織犯罪グループが路上で集めた現金を暗号資産へ換金している実態が明らかになった。同作戦の開始から1年足らずで119人のマネーロンダリング(資金洗浄)容疑者が逮捕され、2,500万ポンド(約52.3億円)を超える現金および暗号資産が押収されている。
こうした実績を踏まえ、財務省やFCA(金融行動監視機構)が定める経済犯罪対策の優先事項においても、暗号資産対策は上位に位置付けられている。
追跡と凍結のギャップ、そして国際連携の重要性
暗号資産をめぐる捜査では、資金の「追跡」と「凍結・回収」の間に大きな課題が存在することも浮き彫りになっている。
例えば、承認フィッシング詐欺に焦点を当てた「オペレーション・アトランティック」では、英・加・米の2万人以上におよぶ被害者が特定され、4,500万ドル(約70億円)以上の暗号資産の動きが追跡された。しかし、実際に迅速な措置によって確保・凍結し得たのは1,200万ドル(約18.8億円)強にとどまり、特定された資産の大部分が初期段階では動かせる状態のまま残るという結果となった。
デジタル資産は短期間のうちにウォレットや取引所、さらに多様な法域(管轄区域)をまたいで移動するため、事態の解決には法執行機関単体の動きだけでは不十分だ。そのため、コインベース(Coinbase)やバイナンス(Binance)、テザー(Tether)といった主要な暗号資産取引所、ブロックチェーン分析企業、および海外の捜査機関との緊密な官民連携が不可欠である。
今後の展望
英国政府が前年度に達成した実績として、犯罪者からの約3億5,000万ポンド(約732億円)の資産没収、10億ポンド(約2,092億円)以上の不正アクセス遮断、2,600万ポンド(約54.4億円)の被害者返還、そしてマネーロンダリングに関連する約4,000件の有罪判決などが挙げられる。
新たに配備される500人の捜査官チームは、これまでの成果をさらに発展させ、インテリジェンス主導型の能力を磨きながら、暗号資産を含む多様な不正資金の流れを徹底的に断ち切る方針だ。























