TetherとFasanaraがStableFund を立ち上げ
世界最大のステーブルコイン「USDT」の発行元であるTether(テザー)社は、ロンドンを拠点とする資産運用会社Fasanara Capital(ファサナラ・キャピタル)と共同で、総額4億ドル(約614.5億円)規模のプライベート・クレジット・ファンドStableFund(ステーブルファンド)を立ち上げた。
両社からそれぞれ初期資金が投じられたこのファンドは、機関投資家を対象に最大30億ドル(約4,608.9億円)の追加資金調達を目指している。
ステーブルファンドStableFundの概要と仕組み
StableFundは、期間が固定されないエバーグリーン(継続型)の構造を採用しており、短期融資の満期到来に合わせて資金が再投資される仕組みになっている。
Fasanaraが投資運用会社として信用戦略の選定やポートフォリオ管理を担い、60カ国以上で展開するフィンテック融資プラットフォームのグローバルネットワークを通じて資金を供給する。融資の対象は、中小企業向け融資、個人向け信用供与、売掛金ファイナンス、サプライチェーン・ファイナンスなど多岐にわたる。
一方、Tetherはオリジネーター(融資案件の組成者)およびアドバイザーとして、融資機会の開拓を担当。暗号資産を担保とする融資ではなく、実体経済における融資の決済インフラとしてUSDTが活用される点が大きな特徴だ。Tetherはオンランプ/オフランプや財務管理用の送金インフラを提供し、従来の銀行システムよりも迅速な国境を越えた資金供給を実現する。
テザーの事業多角化と潤沢な財務基盤
今回のファンド設立は、Tetherが中核事業であるステーブルコインを超えて投資ポートフォリオを広げる一環で、同社は主に、米国債やレポ取引の保有分により、2026年第2四半期に約15億ドル(約2,304.5億円)の純営業利益を計上している。2026年6月末時点での資産残高は1,878億ドル(約28.8兆円)、準備金のバッファーは41億1,000万ドル(約6,314億円)に達している。
この潤沢なキャッシュフローを背景に、同社はこれまでにもアルゼンチンのネオバンクUalá(ウアラ)への2,000万ドル(約30.7億円)の出資やMercado Bitcoin(メルカド・ビットコイン)、イタリアのサッカークラブ「ユヴェントス(Juventus Football Club)」への投資、AI(人工知能)睡眠テクノロジー企業Eight Sleep(エイト・スリープ)の資金調達ラウンド主導など、幅広い分野への投資を進めてきた。今回のStableFundは、同社が公表した案件の中でも最大規模の仕組融資となる。
プライベートクレジット市場への参入意義と今後の展望
世界のプライベート・クレジット市場が拡大を続けるなか、中小企業向けの融資不足額は年間数千億ドルに上るとされている。
Tetherのパオロ・アルドイノ(Paolo Ardoino)CEO(最高経営責任者)は、同社の融資組成ネットワークが企業や地域社会へ直接資金を届けるチャネルになると述べている。また、Fasanaraのフランチェスコ・フィリア(Francesco Filia)CEOは、国境を越えた信用市場の効率性を高めるために構築されたと語っている。
一方で、FinCEN(米国財務省金融犯罪取締ネットワーク)や米国司法省による監視の目もあり、規制当局への対応やコンプライアンスの徹底が求められている。もし機関投資家からの30億ドル規模の資金調達が実現すれば、StableFundはステーブルコインが単なる取引インフラから信用供与のエンジンへと進化を遂げる大きな転換点になると注目を集めている。
























