ビットコインに迫る量子の影 ソラナ共同創設者ヤコベンコ氏が警鐘

量子コンピューティングによる脅威に直面するビットコインを象徴的に描いたデジタルイラスト

量子コンピューティングがもたらす実存リスク

ソラナ(Solana)共同創設者アナトリー・ヤコベンコ(Anatoly Yakovenko)氏が、量子コンピューティングの進展に備えるようビットコイン(Bitcoin/BTC)開発者へ警告を発した。

All-In Podcast『Solanaのアナトリー・ヤコヴェンコ氏が語る仮想通貨の次世代:量子、AI、そしてお金の未来』より動画引用

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オールインサミット2025で同氏は、量子技術がビットコインの暗号基盤に到達する確率を「5年以内に50/50」と述べ、量子耐性のある署名方式への移行を促した。ショアのアルゴリズムを実行できる量子マシンが現れれば、楕円曲線デジタル署名(ECDSA)に依拠する現在の仕組みは破られる可能性がある。公開鍵から秘密鍵を導出され、取引の偽造やウォレット侵害につながるためである。

ヤコベンコ氏の指摘と量子時代のタイムライン

同氏はAI(人工知能)の急速な実装例を挙げ、研究室の成果が短期で現実化する点を重視した。

アップルやグーグルなど大手が量子耐性暗号を導入する局面が、移行の現実的合図になるとの見方も示した。ネットワーク面では、サトシ・ナカモトの初期保有分を含む約25~30%、400万BTC超が公開鍵を晒した古い形式のアドレスにあり、量子攻撃に直ちに脆弱とされる。また、ユーザーが送金時に公開鍵を示す約10分間の確認ウィンドウも狙われうる。十分に強力な量子計算機があれば、この露出時間に秘密鍵を逆算されるリスクがある。

市場の受け止めと移行のハードル

ヤコベンコ氏の危機感に対し、業界の見解は割れている。Blockstreamのアダム・バック(Adam Back)氏は当面の脅威ではないとし、対応は比較的容易との立場を示す。

Bitcoin Coreのピーター・トッド(Peter Todd)氏は現行の量子計算機は実用段階にないとし、ルーク・ダッシュジュニア(Luke Dash Jr.)氏は量子より現行ネットワーク課題を優先すると述べた。一方、ナオリス・プロトコルのデイビッド・カルバリョ(David Carvalho)氏は「5年以内に暗号が破られる可能性」を指摘する。Riverのアレクサンダー・リーシュマン(Alexander Leishman)氏は差し迫ったリスクには慎重だが、議論の高まりを認める。イーサリアム共同創設者ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は2040年頃の解読可能性や2030年以前に20%の確率を示し、テザー(Tether)のパオロ・アルドイノ(Paolo Ardoino)氏は量子耐性アドレス採用の可能性に言及した。マイケル・セイラー(Michael Saylor)氏は量子攻撃懸念を誇張とみる見解を示す。さらに、SECの仮想通貨タスクフォースには量子がデジタル資産基盤に与える影響への警鐘も提出されている。

ハードフォークと合意形成

量子耐性への移行はハードフォークを伴う見通しで、技術面とガバナンス面の合意形成が不可欠である。ヤコベンコ氏はビットコインのシンプルさとプルーフ・オブ・ワーク設計の強さを認めつつ、量子対応を進めれば核心的な価値は維持されるとの見解を示した。結局のところ、長期的存続はコミュニティが量子耐性ソリューションの採用に向けて合意できるかどうかにかかっている。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム