カニエ・ウェストがソラナでYZY発表も急騰後に急落しインサイダー疑惑浮上
カニエ・ウェスト(Ye)氏がソラナ(Solana)で発表したミームコイン「YZY」は、発行直後に時価総額30億ドル(約4,406億円)へ急騰したが急落し、インサイダー取引疑惑や契約リスクが指摘されている。
YZY発表と同時に、決済サービス「Ye Pay」や「YZY Card」も同時に発表され、業界に波紋を広げている。YZYは2025年8月21日(木曜日)にローンチされ、同氏は、「チェーン上に構築された新しい経済」と宣伝。取引開始から急速に買いが集まり、時価総額は30億ドルに達し、最高値3.16ドルを記録した。しかし熱狂は長続きせず、価格は急落して一時0.91ドルまで下落し、その後も1ドル前後で推移しており、8月22日時点での下落率は60%を超えている。
取引量は24時間で約9億3,500万ドル(約1,373億円)に膨らみ、市場の注目度を示した。CoinMarketCapやBitgetなどの取引所に即座に上場したほか、分散型取引所のMeteoraでも取引が開始された。Solanaの価格も上昇し、同ネットワークがミームトークンの拠点として存在感を強めている。
著名人や投資家の反応
BitMEX共同創業者のアーサー・ヘイズ氏はYZYの取引に参入したが、短期間で後悔を投稿した。
Oopsie … fam next time pls don’t let me trade shitters like $YZY. Should have just kept two-steppin. pic.twitter.com/6oiKLNv9Mo
— Arthur Hayes (@CryptoHayes) August 21, 2025
しまった… 次回はYZYみたいなくだらないものをトレードさせないでください。ツーステップでトレードすればよかった。
Ye氏自身も今年2月に「ミームコインは誇大広告でファンを食い物にする」と発言していた経緯があり、今回の参入は大きな矛盾として受け止められている。過去にはイギー・アゼリア(Iggy Azalea)氏やケイトリン・ジェンナー(Caitlyn Jenner)氏といった著名人も独自トークンを発表しており、YZYはそうした流れの延長線上に位置づけられている。
インサイダー疑惑と契約を巡る懸念
YZYの立ち上げをめぐってはインサイダー取引疑惑が相次いでおり、オンチェーン分析によると、供給の90%がわずか6つのウォレットに集中していた。
Coinbaseのコナー・グローガン(Conor Grogan)氏も、当初は単一のマルチシグウォレットが供給の87%を保有していたと指摘している。Lookonchainのデータでは、あるウォレットが45万USDCを投じて短期間で150万~337万ドル(約2.2億円~4.9億円)を得ていたことも確認された。
流動性プールの不自然な設定も懸念材USDコイン(USDCoin/USDC)が追加されずYZYのみが投入されていたため、開発者が流動性を操作できる余地があったとされる。公平性を担保するため、25の契約アドレスが用意され、そのうち1つが公式契約として選ばれたと説明されているが、市場では不信感が拭えない。
エコシステムと契約リスク
YZYは単なるミームコインにとどまらず、Ye氏はYe PayとYZY Cardを含む「YZY Money」構想を掲げている。
Ye Payは加盟店手数料の削減を狙った決済サービスで、YZY CardはYZYやUSDCでの日常利用を目指している。Jupiter Lockを使ったロック解除計画も提示されており、供給量の内訳は、Yeezy Investments LLCが70%、一般投資家が20%、流動性資産が10%で、契約によって段階的にロック解除される仕組みとされる。
しかしRugCheckは、YZYの契約には無制限の発行や売却無効化といった権限が残されており「危険」と警告している。こうした問題は、過去にYe氏のブランドが不適切な商取引を理由にShopifyから停止措置を受けた経緯とも重なり、批判をさらに強めている。業界メディアからは厳しい意見も出ている。Blockworksは「仮想通貨に最も不要なもの」と評し、こうした動きが仮想通貨のPR課題を悪化させかねないと警鐘を鳴らした。
著名人によるトークン発行が短期的な熱狂を生む一方で、規制強化を招く要因となるとの見方が広がっている。