パクソス、バイナンス提携を巡る問題でNYDFSと4,850万ドルの和解

パクソスとNYDFSによる和解とコンプライアンス強化を象徴する抽象的なイラスト

規制対応とBUSD関連の是正に向けた合意

米国のブロックチェーン企業パクソス(Paxos)は、バイナンス(Binance)との提携およびコンプライアンス不備に関する調査について、NYDFS(ニューヨーク州金融サービス局)と総額4,850万ドル(約71.7億円)で和解した。

内訳は罰金2,650万ドル(約39億円)とコンプライアンス体制強化のための2,200万ドル(約32.5億円)である。パクソスは規制要件への適合を進め、事業運営の信頼性向上を図る方針である。(なお、パクソスはステーブルコイン発行、カストディ業務、決済・清算インフラ提供などを手がけるブロックチェーン企業である。)

バイナンス提携を巡る指摘とBUSD停止命令

NYDFSは、パクソスが2018年から2019年にかけてバイナンスと提携し、バイナンスブランドの米ドル連動型ステーブルコインBUSDおよび自社発行のPAXを取り扱った際に、十分なデューデリジェンスを実施していなかったと指摘した。

KYC(顧客確認)や取引監視の不備、マネーロンダリング(資金洗浄)や制裁違反リスクへの対応不足が問題点として示された。また同期間に約16億ドル(約2,365億円)相当の不正資金がパクソスのシステムを通過した可能性があるとされた。

BUSD新規発行の停止と波及

これらの懸念を受け、NYDFSは2023年2月にパクソスへBUSDの新規発行停止を命じた。この措置によりBUSDの供給は縮小し、両社のBUSDに関する提携は事実上終了した。今回の和解は、当局の監督姿勢をあらためて示す事例となった。

和解条件と今後の改善義務

今回の和解には、罰金の支払いに加えてコンプライアンス強化への投資が含まれる。

改善項目は、KYC手続きの徹底、取引モニタリングの高度化、内部監査の拡充などである。パクソスはこれらを計画的に実行し、事業継続の前提となる統制を強化する。NYDFSへ正式な改善計画を提出し、その後も進捗(しんちょく)を定期的に報告する義務を負う。

NYDFSのアドリアン・A・ハリス(Adrienne A. Harris)長官は、金融市場の安全と健全性を守るうえで厳格な監督が重要であると強調した。パクソスはこの和解により法的リスクを軽減し、規制遵守を前提としたパートナーシップ戦略の再構築を進めるとしている。

規制監視強化の象徴としての和解

今回の和解は、特にマネーロンダリング対策の順守に関して、仮想通貨業界に対する規制監視が一層強化されていることを示す事例となった。マネーロンダリング防止規制は、急速に発展する仮想通貨市場において、違法行為の防止と金融システムの健全性確保において極めて重要な役割を担っている。