リップル社がRailを2億ドルで買収しステーブルコイン決済市場での主導権確立へ

ドル記号と上昇する棒グラフを組み合わせたステーブルコイン決済市場の成長イメージ

リップルによるステーブルコイン決済で世界的優位性を狙う大型買収

金融決済・送金システムを手掛ける米国企業のリップル(Ripple)社は、カナダの決済プラットフォームRailを約2億ドル(約295.6億円)で買収する計画を発表した。

リップル社は、カナダ・トロントを拠点とするRailを2億ドルで買収することで合意。リップルは、Railの技術とネットワークを取り込み、国際送金から日常決済まで幅広くカバーする体制を整え、ステーブルコイン決済市場での存在感を高める狙いである。

Railは、規制遵守を重視したB2B向けステーブルコイン決済プラットフォームを提供し、国際的な企業間取引において高速かつ低コストの決済を可能にしている。現在、同社は世界のB2Bステーブルコイン決済の約10%を処理しており、その技術力と運用実績は業界内で高く評価されている。今回の買収により、リップル社は既存の国際送金ネットワークとRailの高度な決済技術を統合し、送金速度やコスト削減だけでなく、規制適合性の強化を図る計画である。買収は規制当局の承認を前提としており、完了は2025年第4四半期を見込んでいる。

Railの強みと統合による効果

Railは、企業がステーブルコイン決済を容易に導入できるよう、バーチャル口座の提供やバックオフィス業務の自動化、複数通貨対応のAPI接続といった機能を備えている。

これにより、利用者は専用の仮想通貨ウォレットや取引所口座を開設せずに既存の銀行口座や事業インフラと連携して決済ができる。リップル社は、国際送金網とRailの決済基盤を融合させ、送金から日常決済まで幅広く対応可能な総合的金融サービスの提供を目指す。この統合により、企業や金融機関の多様なニーズに対応できる体制を構築することが可能になる。

RLUSD普及と市場環境の追い風

今回の買収は、リップル社が2024年に発行した米ドル連動型ステーブルコイン「RLUSD」の利用拡大にもつながる。

RLUSDは発行から間もなく時価総額が6億ドル(約886.9億円)規模に達しており、市場での存在感を高めている。Railの決済インフラを活用することで、RLUSDの用途は国際送金にとどまらず、B2B取引や日常的な商取引にも広がる見通しである。

市場環境の変化

米国ではステーブルコイン規制法案「Genius Act」が成立し、明確で安定した法的枠組みが整備されつつある。

この動きは大手金融機関や事業者によるステーブルコイン決済導入を後押しし、リップル社の市場戦略に有利に働くとみられる。同社は4月に仮想通貨プライムブローカーのHidden Roadを12億5,000万ドル(約1,847.7億円)で買収しており、今回のRail買収はその継続的な事業拡張戦略の一環である。これらの取り組みにより、リップル社は国際送金から日常決済までを網羅する包括的な決済インフラ企業としての進化を加速させている。