DOJが史上最大級の「豚の屠殺」スキームへの対応
DOJ(米国司法省)は、いわゆる「豚の屠殺(pig butchering)」と呼ばれる仮想通貨詐欺に関連して、総額2億2,530万ドル(約327億円)相当のテザー(Tether/USDT)の没収を求める訴状を提出した。
訴状はコロンビア特別区連邦地方裁判所に提出されており、仮想通貨を対象とした押収としてはテザー関連で過去最大規模とされている。この詐欺スキームでは、ソーシャルメディアを通じて被害者に接触し、仮想通貨への偽投資話を持ちかけて資金をだまし取る手法が使われた。被害者は信頼関係を築いた相手からの勧誘を信じ、資金を送金した結果、最終的に資産を失っている。
司法省によれば、詐取されたUSDTは複数の仮想通貨ウォレットに分散して送金され、資金の流れを追跡しづらくするマネーロンダリング(資金洗浄)が行われた。これらの資金は最終的に数十のウォレットに移動し、ブロックチェーン分析によってその動きが特定された。この分析により、400人以上の被害者が関与していたことが判明し、詐欺に利用されたウォレットが偽の投資プラットフォームとつながっていたことも確認された。
また、DOJの発表によれば、不正な収益は複数のウォレットネットワークを通じて洗浄される過程で、OKXのアカウントを含む取引が確認された。これを受けて、米国シークレットサービス(USSS)とFBI(連邦捜査局)は、OKXやTetherに関連するとみられる一部の不審な取引について調査を開始している。
司法省は今回の押収により、被害者への資金返還の可能性があるとしている。
Tetherも協力、過去最大規模の仮想通貨押収へ
ステーブルコインUSDTの発行元であるテザー社も、資金の押収に協力している。
DOJは今回の措置がTetherを対象とした押収として史上最大であると説明し、米シークレットサービスも「同庁史上最大規模のテザー押収」と認めている。
押収対象となったのは、不正に取得されたUSDTを含む仮想通貨で、ブロックチェーン上で複数のウォレットを通じた資金の移動が確認された。詐欺に使用された複数のウォレットがこれらの口座と関連していたことがブロックチェーン分析によって明らかになった。テザーは自社ブログにて、今回の詐欺行為が「豚の屠殺」スキームに関連していたことを認め、当局と連携して対応したと表明。この手法は、被害者との信頼関係を築いた後に虚偽の投資話を持ちかけ、資金を詐取するという特徴があり、近年被害が拡大している。
FBIのインターネット犯罪苦情センターによると、2023年にアメリカ国内で発生した仮想通貨詐欺の被害総額は93億ドル(約1.35兆円)以上にのぼり、そのうち約58億ドル(約8,424億円)が投資詐欺によるものだった。
なお、DOJの発表と同日、ニューヨーク州当局は別の詐欺事件に関連して14万ドル(約2,000万円)を押収し、30万ドル(約4,300万円)を凍結したと発表した。こちらの事件では、ソーシャルメディア上の偽広告を通じて300人以上が被害に遭い、被害額は100万ドル(約1.5億円)を超えたとされている。
司法省は今後も、仮想通貨を悪用した詐欺から人々の資産を保護することを重要課題として取り組んでいく方針を示している。