ロシア政府は仮想通貨を「財産」として扱い押収を可能に
ロシア政府は仮想通貨に対する規制を強化するため、新たな法案を提出した。
現地メディアの報道によると、ビットコイン(Bitcoin/BTC)などの仮想通貨を「財産」として法的に分類し、犯罪捜査において押収や没収を可能にする内容が含まれている。また、国内での仮想通貨による支払いを禁止し、違反者には最大100万ルーブル(約180万円)の罰金と仮想通貨の没収が科される可能性がある。
ロシア法務省が起草したこの法案では、仮想通貨を法的に「財産」と定義し、犯罪捜査において押収・没収できるようにする。ヴァディム・フェドロフ(Vadim Fedorov)司法省副大臣は、逮捕および押収を目的として法案を策定したとし、物理的なウォレットやシードフレーズなどの認証情報の押収も含まれると説明。裁判所はウォレット取引の凍結命令を出す権限も持つ見込みだ。
同副大臣は、仮想通貨が犯罪者にとって魅力的である理由として、匿名性や中央管理の欠如を挙げており、特にダークネット市場を介した薬物取引の増加が当局の懸念を高めている。実際に、ロシアのダークネット市場「Kraken」では仮想通貨取引が68%増加しており、2022年に閉鎖された「Hydra」の後継として最大規模のプラットフォームとなっている。
国内決済の禁止と罰則の導入
ロシア中央銀行と財務省は、国内で仮想通貨を決済手段として使用することを全面的に禁止する法案を共同で提出した。
個人には10万~20万ルーブル(約18万円~36万円)、企業には70万~100万ルーブル(約126万円~180万円)の罰金が科され、違反に使用された仮想通貨は没収される。これはルーブルの法定通貨としての地位を保護する目的がある。
ロシア中央銀行のアンドレイ・メドベージェフ(Andrey Medvedev)法務部長は、これらの罰則は行政違反法の改正により導入されると述べ、仮想通貨の国内支払い利用は「容認できない」との立場を再確認した。「デジタル金融資産に関する法律」に基づくものであり、議論の余地はないと強調している。
一方で、一部の法律専門家は、現在の経済状況を鑑み、仮想通貨は海外との経済活動において活用されるべきだとの見解も示している。
国際取引と今後の展望
ロシア政府は国際貿易における仮想通貨の利用には前向きな姿勢を取っている。経済制裁により従来の国際決済手段の利用が困難となる中で、仮想通貨を代替手段として活用する動きが進んでいる。
ロシア中央銀行は、認定された企業や投資家に対して仮想通貨による国際取引を認める「実験的法的枠組み」の導入を検討中だ。ロシアの仮想通貨政策は、国内では厳格に統制しつつも国際取引には一定の柔軟性を持たせるという二面性を持つ。この戦略は、国家の経済的利益と安全保障を両立させるための現実的なアプローチともいえる。今後の法案の成立と実施状況に注目が集まる。