テザー社がチェイナリシス社と提携
テザー(Tether)は、ブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)との戦略的提携の一環として、資産トークン化プラットフォーム「Hadron by Tether」に同社のコンプライアンスおよびモニタリングツールを統合したと発表した。
これにより、同プラットフォームは実用性と規制対応力を兼ね備えた、信頼性の高いトークン発行基盤としての地位を強化している。
Hadronは、ステーブルコイン、債券、投資信託、商品担保型トークンなどの現実資産を、複数のブロックチェーン上でトークン化・管理・運用するためのプラットフォームであり、主に機関投資家、企業、政府機関の利用を想定している。
統合によって高水準のコンプライアンス環境を実現
今回の統合により、Hadronのユーザーは以下の機能にアクセスできるようになった。
- エコシステム全体に対応したリアルタイム取引モニタリング機能
- KYC(Know Your Customer:本人確認)およびKYT (Know Your Transaction:自分の取引を知る)対応による厳格な顧客審査と取引検証
- 企業システムとの統合を可能にする API (※1)連携による柔軟な業務フロー対応
Application Programing Interface:アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の頭文字からできた造語で、サービスの機能の一部を外部に共有・連携するための役割担うインターフェースのこと
テザーのパオロ・アルドイノ(Paolo Ardoino)CEO(最高経営責任者)は次のように述べている。
Hadron は、コンプライアンス、セキュリティ、スケーラビリティにおけるゴールドスタンダードの構築を目指している。Chainalysis の統合により、高度な透明性とリスク管理が実現する。
一方、Chainalysis のジョナサン・レヴィン(Jonathan Levin)共同創業者兼 CEOは
信頼こそがデジタル資産の未来の基盤であり、私たちの技術とブロックチェーンインテリジェンスによって支えられた今回の取り組みは、より多くの機関や団体にデジタル資産とブロックチェーン技術を届けることを可能にする。
と語った。
グローバル規制の波にどう備えるのか、テザーの未来戦略
テザーはこれまでに55カ国以上、255の法執行機関と協力し、27億ドル(約3,877.5億円)以上の不正資産の凍結を支援してきた。
今回の機能強化は、こうしたコンプライアンス姿勢を Hadron にも組み込むものであり、規制が強化される現在の環境において、資産発行者が安心して利用できる基盤の提供を目的としている。また、Chainalysis のエコシステム監視ソリューションを Hadron に適用することで、テザーUSDTトークン全体の準拠性を高めると同時に、将来的な拡張性を備えたインフラ層としての機能も強化される。
この取り組みは、トークン化と規制対応を両立させる業界モデルとして、他のステーブルコイン発行体やトークン化プラットフォームにも広く影響を与える可能性がある。
さらにテザーは、完全オープンソース型の AI (人工知能)ランタイム「Tether.ai」の立ち上げも発表。プライバシーと分散性を重視した AI インフラの構築を目指している。API キーや中央障害点を排除した設計で、USDT やビットコインによる決済対応も視野に入れるなど、Web3 と AI の融合を意識した展開が進められている。