WorldとWorld ID、ライセンス不備と不正使用でサービス停止
OpenAIのサム・アルトマン(Sam Altman)氏が共同設立したデジタルIDプロジェクト「World(旧Worldcoin)」と関連サービス「World ID」が、インドネシア政府により登録証明の一時停止措置を受けた。
Komdigi(コムディジ:通信・情報省)は2025年5月4日(日曜日)、登録違反および不正な証明書の使用が確認されたとし、これらのサービスに関するTDPSE(電子システム運営者登録証明書)を凍結した。
調査によると、Worldの現地子会社PT Terang Bulan Abadi(株式会社トゥラン・ブラン・アバディ)社は、デジタルサービスを提供する上で義務づけられているPSE(電子システムオペレーター)としての登録をしておらず、TDPSE認証も取得していなかった。
さらに、サービス提供にあたっては、別法人であるPT Sandina Abadi Nusantara(株式会社サンディナ・アバディ・ヌサンタラ)社の登録証明書を使用していたことが判明。この行為は、インドネシアの規制が求める透明性や法的説明責任に反するものであり、重大な違反と見なされている。虚偽表示や不適切なデータ処理の懸念も示されている。
Komdigiは両社を召喚し、経緯や責任の所在について正式な説明を求める姿勢を明らかにしている。通信・情報省のアレクサンダー・サバール(Alexander Sabar)局長は、今回の停止措置は、サービスに関する国民からの苦情を受けて行われた予防的措置でもある事を明らかにしたうえで、次のように述べている。
登録義務を果たさず、他法人のアイデンティティを使ってサービスを展開する行為は重大な違反にあたる。
インドネシアでは、2019年の政府規制第71号および2021年の省令第10号に基づき、すべてのデジタルサービスプロバイダーに登録が義務づけられており、業務の適法性と責任が問われる。Komdigiは今後も監視体制を強化し、違反行為の是正に取り組むとしている。
ワールドコインへの国際的な規制強化の動き
ワールドコインは、虹彩スキャンによる個人認証と、仮想通貨WLDの付与を組み合わせた新たなデジタルIDプロジェクトとして注目されてきた。
しかし、その運営方法や個人情報の取り扱いについては各国で懸念が高まり、規制強化の動きが相次いでいる。
具体的には…、ケニアでは2023年8月、政府の調査を受け、プライバシーや金融セキュリティに関する問題からワールドコインの活動が停止された。スペインおよびポルトガルでは2024年3月にデータ保護当局が生体認証データの収集停止と、過去のデータ削除を命令。スペイン高等裁判所もこれを支持し、同プロジェクトがEU(欧州連合)の一般データ保護規則(GDPR)に違反していると認定した。さらに韓国や香港でも、規制当局によって事業の一時停止が行われており、グローバルでの運営体制が問われている。
サム・アルトマン氏が支援するこのプロジェクトは、世界規模の経済参加を促す手段として構想されているが、今後の展開には法令遵守の徹底と信頼の再構築が不可欠と見られる。