ノルウェーの政府系ファンド「ノルウェー政府年金基金」は、2025年第1四半期に約400億ドル(約6.2兆円)の損失を報告した。
世界最大規模の政府ファンドである同基金は、主に株式、債券、不動産などへ分散投資しており、市場の不安定さが大きく影響した。ノルウェー政府年金基金は資産の約71.4%を株式で構成しており、特に米国上場のテクノロジー企業株の下落が損失の主因となった。ファンドはFTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(※1)に連動しており、北米市場への依存度が高い構造になっている。
先進国から新興国まで約47カ国の約8,000銘柄で構成の株式市場の動きを表している株価指数の事
2025年第1四半期の株式ポートフォリオはわずか1.6%の下落にとどまったものの、依然として世界的な貿易摩擦や景気後退リスクによる影響を受けやすい状況が続いている。2024年通年では2,220億ドルの利益を上げた実績もあるが、今後の運用環境には警戒が必要だ。
ビットコイン間接保有と売り圧リスクの懸念
同ファンドは、ストラテジー(Strategy)、マラ・ホールディングス(Mara Holdings)、コインベース(Coinbase)、ライオット・プラットフォームズ(Riot Platforms)など、ビットコイン(Bitcoin/BTC)を大量に保有する企業への投資を通じて、間接的に仮想通貨市場にエクスポージャーを持っている。2024年末時点でのビットコイン間接保有量は約3,821BTC、評価額は3億5,600万ドル(約511億円)に上るとされる。
経済不安が続く中で、これらの資産が売却対象となるリスクも懸念されている。市場環境がさらに悪化した場合、ファンドがリスク資産を圧縮する過程でビットコイン市場にも売り圧力が波及する可能性がある。また、リスクヘッジ策としてビットコインを大量に保有する企業への投資を増やす選択肢も考えられるが、現時点でビットコイン現物ETF(上場投資信託)への直接投資を行う可能性は低いと見られている。今後も慎重な運用姿勢が続く見通しだ。
世界では、アブダビの政府系ファンド「Mubadala Investments(ムバダラ・インベストメンツ)」や、ウィスコンシン州投資委員会がビットコイン現物ETFに投資しており、政府系ファンドによる仮想通貨市場への関与は徐々に拡大している。ノルウェー政府年金基金の今後の動向にも注目が集まる。