ボストン連邦準備銀行とMITによるCBDC研究結果を発表
ボストン連邦準備銀行とMIT(Massachusetts Institute of Technology=マサチューセッツ工科大学)は、米国の政策決定に情報を提供しようとするCBDC(中央銀行発行デジタル通貨)プロジェクトである「Project Hamilton(プロジェクトハミルトン)」の結果を発表した。
ボストン連邦準備銀行とMITは、CBDC研究に焦点を当てた複数年にわたる共同研究の取り組みであるプロジェクトハミルトンのフェーズ1の結果を2022年2月3日(木曜日)発表した。これは、米国規模に拡大できるCBDCの実用的なプロトタイプを研究および設計するための共同作業である。なお、米国政府のどの州および連邦準備銀行も正式なCBDCの作成または実施を命じていない。ボストン連邦準備銀行のエグゼクティブバイスプレジデントであるジム・クーニャ(Jim Cunha)氏は声明のなかで、次のように語っている。
新興技術がどのようにCBDCをサポートできるか、そしてどのような課題が残っているかを理解することが重要だ。MITと私たちの技術者の間のこのコラボレーションは、スケーラブルなCBDC研究モデルを作成しました。これにより、これらの技術とCBDCを設計する際に考慮すべき選択についてさらに学ぶことができます。
トランザクション処理ソフトウェアOpenCBDC構築を目指す
フェーズ1では、「OpenCBDC」と呼ばれるトランザクション処理ソフトウェアの構築を目指した。
これは、米国と同じくらい大きな国の「汎用CBDC」として機能するのに十分な技術的健全性を備えており、ボストン連邦準備銀行とMITは、OpenCBDCをオープンソースソフトウェアとしてリリース。CBDCをサポートできるコア処理エンジンの構築に関して、同チームは目標を達成。速度は1秒あたり170万トランザクションを超え、大多数は2秒以内に決済の最終段階に達した事がわかった。また、このテクノロジーには、ポリシーの決定に応じて調整できる柔軟性があるとのこと。
ボストン連邦準備銀行は、連邦準備銀行の第1地区を担当しており、調査は連邦準備制度理事会の審議とは独立して実施されるが、プロジェクトハミルトンは、米国の中央銀行のデジタル通貨を取り巻く政策決定に情報を提供し、充実させることを目指している。さらに、FRB(Federal Reserve Board=米連邦準備制度理事会)自体には、CBDCの調査と実験も行うTechLab(Technology Lab)がある。
ユーザープライバシーは、プロジェクトの設計に関して定められた優先事項の1つだが、使用されている言語は、プライバシーの考慮事項が主にユーザーを第三者から保護することに焦点を当てていることを示唆している。
また、フェーズ2では、ボストン連邦準備銀行とMITが他の技術設計を調査して、フェーズ1テクノロジーの「堅牢なプライバシー、復元力、機能性」をさらに最適化すると同時に、異なる設計間のトレードオフをより明確にしているものの、このフェーズを完了するには数年かかるとみられる。
プロジェクトハミルトンは、2人のハミルトンにちなんで名付けられており、アレクサンダー・ハミルトン(Alexander Hamilton)氏は、米国の最初の財務長官であり、米国銀行(連邦準備制度の前身)の主要な創設者だ。そして、もう一人のマーガレット・ハミルトン(Margaret Hamilton)氏は、NASAのアポロ計画用のソフトウェアを構築したMIT計装研究所のエンジニアリングソフトウェアディレクターだ。