ブロックチェーン活用のトレーサビリティ穀物管理を実証実験

ブロックチェーン活用のトレーサビリティ穀物管理を実証実験

世界最大級の穀物・油糧種子企業である米国大手のブンゲ(Bunge)とカーギル(Cargill)が提携し、共同事業「コバンティス(Covantis)」を設立することを発表した。これからブラジルの農業事業の発展に向け、産業全体を活性化させるためにブロックチェーン技術を活用する。

当プロジェクトに関わる企業は以下の通りで、農業大手企業がコンソーシアムを作り組織内での情報交換を行いながら、一つのプロジェクトを進める方針だ。

  • ルイ・ドレフュス・カンパニー(仏)
  • コフコ・インターナショナル(中国)
  • グレンコア・アグリカルチャー(蘭)

これらの企業が提携した理由としては、各地域の農業分野のデータを統合し、すべての参加者の間のコミュニケーションを促進しながら、より汎用性の高いデータを抽出すること。また、港からエンドユーザーの手元まで届く経路をブロックチェーンを有効活用しながらサプライチェーン管理を最適化していく予定で、公式のプラットフォームは来年立ち上がる予定だ。

マーケット対象としてブラジルが選定された理由は、市場の複雑な構造が関係している。マルコス・アモリン氏はNational Association of Cereal Exporters(穀物輸出業者協会:Anec)は現在のブラジルにおける食料品の輸出入業務の課題を以下のように発言している。

各便に購入契約と販売契約があるほか、植物検疫証明書も必要であり、各国で要求される一連の書類もある。船は列をなして待機しており、一定の積載率にしなくてはならない。そのために港の業務が膨大なものになり、末端のどこかで遅れが生じれば供給網全体が損失を被る。

商品を発注してから、発注者の手元に届くまで多くのステークホルダーを仲介する必要があり、それらの処理に必要な手続きは全て紙ベースで行われるため、非常に効率が悪い状態だ。

ブラジルでは毎年、およそ50万件の購入・販売契約が企業間で交渉されており、プラットフォームの第1弾の実証実験は今年7~8月にサントス港で実施されたことを皮切りに今後はより多くの商社や発穀物生産者などが参加することになりそうだ。

ブロックチェーンの訴求効果や取り組むための意義はこのようにインフラ整備が万全に整っていない国や地域で行われることで技術的な発展へと繋がることになるだろう。また、比較的新しい制度や仕組みを取り入れやすい環境下にあるため、農作物の管理に留まらず、新生児の出生記録のような新しい官民連携の取り組みが生まれることに期待したい。

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外資系の医療機器、エネルギー関係の企業で5年間営業として従事した後、今後は個人にスポットが当たる時代だと考え、ブロックチェーンの持つトークンエコノミクスの世界観に感銘を受け、少しでも情報源として役に立てるよう日々発信しています。 現在は 実際にコードを書いたり、 イベントに足を運ぶなど精力的に 活動を行ない情報を発信しています。