インド政府、仮想通貨取引を禁止する法律を再検討
インド政府は、仮想通貨取引を禁止する新しい法律の導入を計画しているようだ。
Bloombergの報道によると、インド政府が法案を議会に提出する前に、法案に関する閣議がなされる予定であり、その結果によってはインドで仮想通貨が禁止される可能性があるとのことだ。現段階では具体的な法案の詳細などは明らかにされていないものの、仮想通貨取引の全面禁止の法案が成立すれば、インドの170万人以上の仮想通貨ユーザーに影響があるとみられている。
インド政府は仮想通貨について、やや懐疑的な見方を示しているが、インドの仮想通貨市場についてはこれとは反対の様相を呈している。というのも、インド最高裁判所が3月に銀行規制を解除して以来、インドにおける仮想通貨の取引量は増加を続けている。
TechSci Researchによると、仮想通貨取引所WazirXは2020年3月に400%、2020年4月に270%の取引量の増加を記録している。また仮想通貨データサイトであるコインダンス(Coin Dance)によると、P2P(ピアツーピア)取引所のPaxfulとLocalBitcoinsのビットコイン取引量が2020年7月に過去最高になったことを報告している。
インドと仮想通貨の関係性
インドは世界で最も急速に成長している5つのビットコイン大国の1つであり、Paxfulにおける仮想通貨の取引高は2019年5月の約57万6000ドルから2020年7月には897万ドルに成長している。インドではデルタ取引所などの小規模な取引所も成長しており、デルタ取引所のパンカジ・バラニCEOによると新規顧客が前月比で倍増しているようだ。
これらのインドにおけるビットコイン需要拡大の理由はいくつか考えられるが、2016年の高額紙幣廃止が大きく関係しているとみられている。
2016年にインド政府は現行の500ルピー(約800円)紙幣と1,000ルピー紙幣を廃止する旨を発表しており、この二つの紙幣はインドで発行されている紙幣の約86%を占めている。高額紙幣廃止後の18日間でビットコインの価格は757ドルから1020ドルに急騰しており、インド人投資家にとって、金などと同様に価値を貯蔵する手段としてビットコインの需要が急増したことが考えられる。
また、インドでは海外で働いているインド人が1700万人以上いるとみられており、2018年には800億ドル(約8.6兆円)以上を海外から送金していてその手数料は約6100億円にも登るとされている。そのためインドでは、高額な支払い手数料を回避するため、様々な国際送金手段を模索している中で、選択肢の一つとしてビットコインが注目されているようだ。
法案の詳細などは現時点では明らかにされていないが、仮想通貨市場全体にも大きな影響を与える問題であることは間違いないだろう。