ブロックチェーン基盤の国際物流に、英国大手銀行が参画
コンテナ船輸送の世界最王手であるA.P.モラー・マースク(以下、マースクライン)はIBMと独自に開発している、国際貿易向けのブロックチェーンプラットフォーム「トレードレンズ」コンソーシアムに英国大手銀行スタンダード・チャータードが参画したことが今月の10日に同行から発表された。
「トレードレンズ」は2018年 12月に商用サービスが開始されており、国際貿易におけるコンテナ輸送のトラッキングに活用されているようだ。今回の同行のプレスリリースにおいて、貿易業務の責任者アーティ・フェルナンデス氏は、次のように述べている。
「貿易に関するエコシステムは、複雑なプロセス、長い所要時間、紙ベースの文書、関係者間におけるネットワーク接続の制限など、何世紀も前の貿易金融業界に由来する大きな問題点を抱えている」
貿易業界におけるブロックチェーンの活用事例は「トレードオフ」以外にも多く存在しており、どのユースケ―スにおいても貿易事業のレガシィな紙文化のやり取りや手続きで発生する、非効率的な領域を簡易化し、生産性を向上させることが目的だ。ブロックチェーンを活用した貿易事業の事例は以下のようなものが存在する。
- R3 Corda 「マルコポーロ」
- アクセンチュア 「日通×製薬プラットフォーム」
- NTTデータ×東京海上日動
- 三菱UFJ銀行「komgo」
多くの貿易金融プラットフォームは、「信用状」や「船荷証券」など、通常煩雑な手続きが必要になる紙ベースのやり取りに特化したミニマムな運用から始まり、RFIDなどのIOTデバイスを活用したコンテナ単位の物流を管理するところにフォーカスされているようだ。ブロックチェーンで記録できる部分もまだ限定的なため、使用範囲の広域化を行うための業務フローの整理や、スケーラブルな設計が今後必要になるだろう。
「トレードレンズ」のコンソーシアムに参画されている企業数は2020年3月現在で150組織以上が参加しており、海運会社・政府・貿易代理店が、税関プロセスのデジタル化、認証と出荷情報の透明化・リアルタイム検証のため活用している。コロナウイルスの影響で組織の収益面が悪化している現在において、作業効率の改善を行うことは単一組織やサプライチェーン全体においても非常に有益な事であり、世界経済の助け舟になる可能性を大いに秘めているのではないだろうか。