元中国人民銀行会長、デジタル人民元の3つのユースケースを解説
2019年11月26日、地元メディアCaixinによれば、2019 Caixin Hengqin Forumに参加した元PBOC総裁の周小川氏は、中国は決済手段と小売業のためにデジタル人民元(デジタル通貨)を使用することを強調した。さらに今の世界において、デジタル通貨の実装は主に2つのタイプがあると語ったという。1つは国内向けの電子決済と小売業用のデジタル通貨。もう1つは国際間の金融決済に使用されるデジタル通貨である。
今回の会議で、周氏は改めて中国が発行するデジタル人民元は、1つ目の国内向けに使用されることを強調したことになる。また、PBOCがデジタル通貨を発行する理由は、政府が現金取引を追跡可能にするためだという。将来的には米ドル依存度を減らすことで制裁の影響を受けにくくする目的もある。
デジタル人民元の3分野
ブロックチェーンやデジタル通貨、国際金融に造詣が深い周氏は、デジタル人民元の3つのユースケースを挙げている。
1つ目と2つ目は上記の会議で述べている。3つ目は、デジタル人民元は国家主権の維持に役立つというものだ。周氏は「人民元は中国内で競争するべき」と考えている。
なぜ今この発言?
発言の内容自体は特に目新しいものではない。なぜこのタイミングでこの発言がされたのかと言えば、今月19日、米国で国家安全保障危機のシミュレーション会議が行われたからだ。この架空の会議は、デジタル人民が発行された後の2021年の未来を想定している。
会議は、北朝鮮がデジタル人民で購入した材料を使用して製造された兵器の大規模な(おそらく核の)ミサイル実験を行った数日後に開催された、という設定だ。この会議の場(2021年)でも米ドルはいまだ世界の準備通貨であるとしながらも、突如別の通貨が力をつけた場合、その立場は変わる可能性があるとした。会議の中で副大統領を演じたオサリバン氏は「我々は世界経済を二分する道を歩んでいるのか」とも述べた。
会議の終盤では、北朝鮮はSWIFT(しばし米国が制裁に使う)から30億ドルを盗んだとされている。
デジタル人民元の将来は?
国内流通で収まるわけがなく、デジタル人民元を扱うとされるWeChatとAlipayはすでに国際送金が可能になっている。中国人海外旅行者は年間約2,000億ドル(約21兆8千億円)も海外で消費している。
多くの人はデジタル人民元の世界進出を疑っていないが、周氏はこれを信用危機に繋がると危惧している。