「中国中央銀行は独自の仮想通貨計画を強化するべき」=中国人民銀行調査局局長
2019年7月8日、北京大学で行われた会議において、中国人民銀行調査局のWang Xin局長が「中央銀行は独自の仮想通貨計画を強化するべきだ」と発言した。この発言の発端となったのが、2020年上半期に発行予定のFacebookの仮想通貨「Libra」だ。「脱米ドル」を掲げている中国にとっては監視すべき対象となっている。
なぜLibraが監視対象に?
「Libra」がステーブルコインとして安定した価格で流通され、国境を超えて決済手段に使われるようになれば、世界は米ドルに依存する必要がない。なぜなら、世界の人口約75.5億人に対し、2019年3月時点でのFacebookの月間アクティブユーザーは世界で23.8億人にもなるからだ。
もしも世界人口の1/3が「Libra」を利用すれば、もはや米ドルに依存する必要がなくなり、国際取引における米ドルの比率は低下する。この将来展望は、米国の経済制裁によってドルの価値が変わることで不利益を被る国々にとって、実に興味深いものだ。中国はすでにロシアとの貿易で米ドルを排除している。
なぜ仮想通貨計画を強化?
中国人民銀行は2014年に主要な中央銀行の中では初となるデジタル通貨研究をスタート。2017年には専門の研究機関を設立。このデジタル通貨は、投機的なものではなく、あくまで現金の代用として位置づけられている。
この分野において最先端のポジション確保に努めている中国人民銀行だが、実際にはまだ多くの研究課題があると言える状態だ。また、どこまで研究が進んでいるのか、内容も公表されていない。
政府によってビットコインを始めとする仮想通貨売買が禁止されているからこそ、政府公認仮想通貨の登場が待ち望まれており、そのなかで舞い込んだ「Facebookによる『Libra』発行」のニュース。現時点で中国国内のFacebook使用は禁止されているが、将来的にはどうなるかわからない。
そうなると「Libra」が中国の金融政策などに強い影響を与える可能性がある。このため、今まで遅々として進まずにいた中国人民銀行による独自のデジタル通貨計画や研究を、嫌でも強化・促進する必要が出てきてしまった。
専門家の中には、加熱する仮想通貨戦争に遅れを取らないためにも「中国版Libra」の開発をするべきとの声も上がっている。仮想通貨はリスクが高いものと考えている中国政府だからこそ、ステーブルコインという形態での仮想通貨発行はかなり現実味を帯びてきた。