バイナンスが中央アジア・東欧向け決済拠点にカザフスタンを選定
世界最大の暗号資産取引所Binance(バイナンス)は、中央アジア、CIS(独立国家共同体)、および東欧地域を対象とした新たな国際決済ハブの拠点として、カザフスタンを選定したことが明らかになった。
同国の中央銀行にあたるNBK(カザフスタン国立銀行)をはじめとする政府主要機関との提携を通じて、規制の傘下で領域内の国境を越えた決済や送金を一元化する計画が進められている。
かつて暗号資産マイニングの受け皿として世界的に脚光を浴びたカザフスタンは、今やデジタル資産全体の包括的な金融ハブへと進化を遂げようとしている。
カザフスタンで新ライセンスの取得を目指す現地法人の設立計画
このプロジェクトの中核となるのは、Binanceがカザフスタン国内に現地法人を立ち上げ、NBKから第一種決済機関(カテゴリー1)のライセンスを取得する試みだ。
ライセンスが承認されれば、Binanceはこれまで分散していた同地域向けの決済インフラや財務機能、国境を越えた送金業務の一部をカザフスタンへ移管するとのこと。対象エリアのユーザーは、現地法人を経由して安全かつ透明性の高いルートでデジタル資産関連の決済を処理できるようになる。
一方で、金融システムの安全性を担保するため、カザフスタン国立銀行が厳格な監督権限を保持する。ライセンスの付与にあたっては、財務の健全性やシステムの信頼性はもちろんのこと、KYC=顧客確認およびAML=マネーロンダリング(資金洗浄)防止体制が極めて高い水準を満たしているかが厳しく審査される方針だ。
3つの政府系機関とMOUを締結で広がる協業範囲
Binanceは本構想を推進するため、カザフスタン国立銀行、AI(人工知能)・デジタル開発省(旧デジタル開発・イノベーション・航空宇宙産業省)、およびAIFC(アスタナ国際金融センター)の3機関と相次いで覚書を締結した。各機関との主な取り組み内容は以下の通りだ。
・カザフスタン国立銀行(NBK):
地域決済インフラの構築、現地決済機関の設立およびロードマップの策定
・AI・デジタル開発省:
自国通貨建てステーブルコインの発行検討、次世代決済ソリューションおよびコンピューティング基盤の開発
・アスタナ国際金融センター(AIFC):
デジタル資産を対象に含めた「投資家向け税務居住者プログラム」における協力
今回の提携は単なる取引所の枠にとどまらず、法定通貨裏付け型ステーブルコインや現実資産のトークン化(RWA)など、デジタル金融全般を包括する取り組みとなっている。ただし現時点ではライセンスが正式に交付されたわけではなく、サービス対象国やシステム構成、具体的な開始時期といった詳細は段階的に発表される見通しだ。
マイニング拠点からユーラシアの暗号資産ハブへの脱皮
カザフスタンはもともと、中国によるマイニング規制強化に伴い、多くのマイナーが流入したことで知られていた。当初は電力不足などの混乱が生じたものの、専用の課税制度や電力利用ルールの整備によって問題を克服。その後、国を挙げた暗号資産産業の育成戦略へと舵(かじ)を切った。
法整備面でも大きな前進が見られ、従来、暗号資産取引などの特別許可はAIFCの管轄区域内に限定されていたが、法改正により同区域外でもNBKの監督下でライセンスを取得できる枠組みが整備された。これにより、国際的な大手企業が国内全域で事業を展開しやすい環境が整いつつある。
地域情勢の変化とバイナンスのグローバル戦略
Binanceにとって、今回のカザフスタン拠点化はグローバル戦略の再編という意味合いも強く持っている。同社は2023年にロシア市場からの撤退および事業売却を完了しており、CISおよび周辺諸国における新たなコンプライアンス基盤の再構築が急務となっていた。
また、Binanceの創設者であるジャオ・チャンポン(趙 長鵬:Zhao Changpeng)氏は周辺国との関係強化も精力的に進めている。近隣のキルギスでは、CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)「デジタル・ソム」の取り組みや、法定通貨連動型トークン「KGST」の開発支援について協議した。
EU(欧州連合)のMiCA(Markets in Crypto-Assets:暗号資産市場)規制への対応など、西側諸国で規制のハードルが高まる中、カザフスタンをはじめとする中央アジア諸国は、明快な法規制と政府主導のデジタル化構想を掲げて新たなクリプトハブとしての存在感を急速に高めている。
























