Swift、世界の銀行とオンチェーン金融を繋ぐ新ブロックチェーン台帳を公開

Swiftが発表した新しいブロックチェーン台帳を象徴するデジタル金融ネットワークのイメージ

グローバル金融ネットワークの変革を目指す動き

国際送金ネットワークを担う SWIFT は、Sibos 2025でブロックチェーンベースの新台帳を発表した。

Chainlink(チェーンリンク)やConsenSys(コンセンシス)と連携し、世界の銀行をオンチェーン金融に接続して国際決済の効率と透明性を高める構想だ。従来の決済レールを生かしつつ、スマートコントラクトで取引の記録と検証を自動化。急拡大するステーブルコインに対抗し、24時間365日の即時国際取引を実現する狙いもある。

規制要件に対応するため、ISO 20022 (※1)メッセージングを統合し、コンプライアンス情報を台帳に組み込む設計とした。ConsenSysのLineaを用いたテストでは、ゼロ知識証明で処理のスピードとプライバシーの両立を検証している。

(※1)ISO 20022とは…
外国送金で使われるSWIFTメッセージ形式が、現MT形式から2025年11月までにISO20022形式へ移行することで、ISO(国際標準化機構)が定めた、金融サービスに関するデータフォーマットの共通化・標準化を目指す国際標準規格

SWIFTと大手銀行、ConsenSysのLinea上でブロックチェーン決済を検証

2025.09.29

SWIFTの新台帳の仕組みと狙い

SWIFTが発表した新台帳は、ステーブルコイン市場に対抗する銀行インフラの進化と位置づけられる。

ドル連動型トークンが主流の市場はすでに3,000億ドル規模となり、既存の国際決済に大きな影響を与えており、SWIFTは法定通貨に基づく規制対応型の代替手段を提供することで、自らのネットワーク価値を高める戦略を取っている。

Chainlinkとの長年の協業

SWIFTとChainlinkは約10年の協業実績を持ち、クロスチェーン相互運用性プロトコル(CCIP)を通じてプライベートチェーンとパブリックチェーン間のトークン転送を実証してきた。

UBS、Citi、BNY Mellon、Euroclear、Franklin Templetonといった大手機関とトライアルを実施し、SWIFTの既存ネットワークを介してトークン化資産を決済できることを示している。Chainlinkのオラクルを統合することで、金融機関はトークン化資産を安全に発行、移転、決済でき、導入コストやコンプライアンス負担を軽減できるとされる。

コーポレートアクション改革と580億ドルのコスト削減

SWIFTはさらに、Chainlink、Euroclear、DTCC、UBS、DBS銀行などと協力し、配当、合併、株式分割といったコーポレートアクション処理を近代化するプロジェクトを進めている。

従来はPDFやプレスリリースを経由する非効率な仕組みに依存し、遅延や改ざん、情報損失のリスクを抱えていた。世界全体で年間580億ドルのコストが発生し、依然として75%の金融機関が手作業による照合を続けているのが実情だ。

期待と課題

新システムはChainlinkのオラクル、AI(人工知能)、ブロックチェーンを組み合わせて「ゴールデンレコード」と呼ばれる検証済みの単一データを生成し、SWIFTのISO 20022メッセージングを通じて各機関に共有する。

テストでは100%の精度を示し、多言語の情報配布が従来の24~48時間から数分に短縮された。支持者は、調整コスト削減と透明性向上、プログラム可能な決済の普及を期待する。一方、批評家は統合コストやオペレーショナルリスク、法的確定性の課題を指摘している。SWIFTはこれらを認識し、段階的展開と既存法制度との適合を重視するとしている。最終的にこの取り組みは、ステーブルコインに代わる選択肢を提示し、オンチェーン金融と従来型金融の融合を加速させる可能性を持っている。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム