IMFが自国通貨トークンが招く意図せぬデジタル・ドル化を警告
IMF(国際通貨基金)は、自国通貨の利用促進や外貨依存の抑制を目的として導入される「現地通貨建てステーブルコイン」が、結果的に米ドル建てトークンへのシフトを後押ししてしまう可能性があると警告した。
IMFのダン・カッツ(Dan Katz)第一副専務理事はケープタウン大学での講演にて、同一のブロックチェーンインフラ上に自国通貨建てと米ドル建ての両トークンが存在することで、両者の交換が大幅に容易になると指摘した。
従来の外貨両替では銀行や公的な取引窓口が仲介役となり、為替規制や資金フローの監視が行われてきた。しかし、ブロックチェーン上のDEX(分散型取引所)や流動性プール、P2P取引などを活用すれば、仲介者を介さずにトークン同士を直接交換できるようになる。この取引の“摩擦”の減少が、かえって米ドル建てステーブルコインへの移行を加速させる架け橋になりかねないと警告した。
圧倒的なネットワーク効果を誇るドル建てトークン
現在、ステーブルコイン市場の時価総額は3,000億ドル(約47.4兆円)規模で推移しており、その約99%をドル建てトークンが占めている。
高い流動性と世界的なネットワーク効果を備えたドル建て資産に対抗することは、新興国の現地通貨建てトークンにとって容易ではない。実際に、例えば南アフリカでは、ドル建てトークンの利用自体はまだ限定的であるものの、現地通貨(ランド)建てトークンの需要はそれをさらに下回っている。BIS(国際決済銀行)の調査によると、主要なドル建てステーブルコインへの資金流入の70%以上が米ドル以外の通貨からのものだ。さらに、自己管理型ウォレット(セルフカストディ)を用いた国境を越えた取引は、従来の規制当局による監視を困難にさせていることが明らかになった。
国ごとに異なるリスクと今後の規制の方向性
IMFは、この影響は各国のマクロ経済構造によって異なると分析。すでに一定のドル化が進んでいる経済圏ではデジタルへの手段変更にとどまる一方、インフレや自国通貨安、ドルへのアクセス制限に直面している国では、新たな外貨獲得ルートとしてドル需要が一気に高まるリスクがある。
ただし、IMFは外国製ステーブルコインの一律禁止を推奨しているわけではなく、当局に対し、法定通貨と暗号資産を交換する事業者やオンチェーン上の交換拠点を規制対象として組み込むよう促している。送金コストの削減といった技術的メリットを活かしつつ、国際的なデータ共有や法的枠組みの適応を進めることが今後の課題とされている。
























