米国とテザー社がトロン上のイラン関連USDT 1億3100万ドル相当を凍結
中東における米国とイランの停戦合意が崩壊し、両国間の軍事衝突が激化するなか、米国政府はイランの資金源を断つための強力な経済制裁を発動させた。
米国財務省のOFAC(外国資産管理局)は、イラン中央銀行やイスラム革命防衛隊(IRGC)などの制裁対象組織と結びつきのある、複数の暗号資産ウォレットへ制裁を科したことを公表。これを受け、米ドルペッグステーブルコイン「USDT」を発行するテザー(Tether)社は、トロン(Tron/TRX)ブロックチェーン上に存在する4つのウォレットに保管されていた、総額約1億3100万ドル(約212.3億円)相当のUSDTを凍結した。
ブロックチェーン追跡と軍事作戦の激化
今回の資産凍結は、オンチェーンの挙動を監視していたブロックチェーン調査機関Specter(スペクター)が不審なアドレス群を特定したことが端緒となった。
.@USTreasury is committed to disrupting and degrading Iran’s illicit financial activities, including its abuse of digital assets. Today, Treasury’s Office of Foreign Assets Control sanctioned multiple wallets tied to the Central Bank of Iran, resulting in the freeze of over $130…
— Treasury Secretary Scott Bessent (@SecScottBessent) July 14, 2026
米国財務省は、イランの不正な金融活動、特にデジタル資産の悪用を阻止し、その影響力を弱めることに尽力しています。本日、財務省外国資産管理局は、イラン中央銀行に関連する…
同機関の分析によると、これらのウォレットにあった資金の大部分は、凍結措置が取られる直前に決済プロバイダーのDTC Pay(DTCペイ)や暗号資産取引所Bitso(ビットソー)から引き出されたものだ。財務省を率いるスコット・ベセント(Scott Bessent)長官は自身のXアカウントを通じて、「イランによるデジタル資産を悪用した不正な金融活動の阻止に全力で取り組んでいる。今後も資金流出ルートを徹底的に追跡し、違法な収益へのアクセスを遮断する」と強い姿勢を表明した。
背景には武力衝突が
この金融包囲網の背景には、地上および海上でのリアルな武力衝突がある。米中央軍はイランへの港湾封鎖を再開し、4日連続となる軍事攻撃を実施。対するイラン軍も「ライトニング作戦」の第7段階として、ヨルダンにあるアル・アズラク空軍基地の米軍施設へドローンを用いた空爆を実行したと主張している。
さらに米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領がテレビインタビューで、イランが交渉に応じない場合はインフラへのさらなる打撃も辞さないと警告した直後であり、情勢は緊迫の一途を辿(たど)っている。
官民連携によるオペレーション・エコノミック・フューリー
米国当局によるイランの暗号資産取り締まりは、これが初めてではない。
2025年3月に始動した、イランの軍事調達・金融ネットワーク解体を目指す包括的戦略「オペレーション・エコノミック・フューリー(Operation Economic Fury:経済的猛威作戦)」に基づき、同年4月にもテザー社は米当局の要請を受け、3億4,400万ドル(約557.6億円)以上のUSDTを凍結。同長官によると、同作戦下でこれまでに押収・凍結されたイラン関連の暗号資産は累計10億ドル(約1,620.8億円)規模に達している。さらに先月にはNobitex(ノビテックス)をはじめ、ウォレックス、ビットピン、ラムジネックスといったイランの主要取引所も一斉に制裁対象となった。特にNobitexは、同国への暗号資産流入の過半数を占め、イラン中央銀行によるステーブルコイン調達を裏で支えていたと指摘されている。
ステーブルコインの透明性と制裁効果の現実
USDTのようなステーブルコインは、手数料の安さや送金速度の速さから通常の経済活動に重宝される一方、制裁回避を試みる国家のターゲットにもなりがちだ。しかし、パブリックブロックチェーンであるトロンの性質上、すべての取引履歴は白日の下にさらされる。
テザー社、トロン、そしてデータ分析のTRM Labsが共同で設立した金融犯罪対策ユニット「T3」の監視網や、VisaとAllium Labsが公開したダッシュボードなどの普及により、オンチェーン上のクリーンな資金の流れはリアルタイムで可視化。銀行預金とは異なり、不正なアドレスの即時凍結やトークンの無効化=焼却が容易なステーブルコインの構造が、今回の迅速な差し押さえを可能にした。
一方で、国際制裁の専門家からは冷静な見方もあります。アトランティック・カウンシルのダニエル・タンネンバウム(Daniel Tannebaum)シニアフェロー(上級研究員・執行役員)は、今回の多額の凍結を“重大な成果”と評価しつつも、長年制裁下で生き延びてきたイランの構造そのものを変える決定打にはなり得ないと分析。実際、イラン経済を支えているのは、米国の制裁を無視してテヘランとの貿易を継続している中国などの第三国の存在であり、今後は暗号資産取引所や海外の精製業者へと規制の焦点が移るかどうかが注目される。
























