ボリビア、USDTを「国家決済」へ:ボリビアーノ・米ドルとの並行流通をTether社と検討

ボリビアがUSDTをボリビアーノ・米ドルとの並行流通を検討

ボリビアは自国通貨ボリビアーノおよび米ドルに並ぶ決済手段としてUSDTを正式承認する、ラテンアメリカ初の国家となることが明らかになった。

長期にわたる深刻な米ドル不足にあえぐボリビアが、テザー(Tether)社のステーブルコイン「USDT」を公式な決済手段として組み込む動きを加速させている。実現すれば、ボリビアーノおよび米ドルに並ぶ決済手段としてUSDTを正式承認する、ラテンアメリカ初の国家となる。

ボリビアの経済を支えてきた天然ガスの生産・輸出が低迷したことで、国の外貨準備高は右肩下がりに減少。この影響で民間企業や輸入業者はドル資金の確保が極めて困難になり、その代替手段としてUSDTへの依存度を急速に高めている。

民間でも定着しつつあるUSDTへの依存

実際、政府主導以外でも、ボリビア国内ではUSDTへの依存度が急速に高まっている。

政府主導の先例: 2025年3月、国営エネルギー企業YPFBが燃料輸入の決済に暗号資産を利用する認可を取得。
日常決済への浸透: 2025年6月には、国内の商店がチョコレートなどの日用品をUSDT建てで価格表示している様子がソーシャルメディア上で話題に。「自国通貨が機能不全に陥った際の避難先」として、実生活に深く溶け込んでいる。

銀行業界の先行と政府が描く「並行流通」のロードマップ

こうした民間のトレンドを背景に、金融機関もすでにインフラ整備を進めている。

Banco Bisa: 早くも2024年10月にUSDTのカストディ(保管)サービスを開始。
国営Banco Unión & Banco FIE: 2025年4月にそれぞれUSDTの購入機能や、売買専用の「暗号資産口座」を開設。
民間市場: トヨタやBYD、ヤマハといった大手ディーラーが、車両販売時のUSDT決済に対応し始めている。

ボリビアの中央銀行が2024年6月に暗号資産の禁止令を解除して以降、取引規模は前年の4,650万ドル(約75.5億円)から2億9,400万ドル(約477.3億円)へと急増(約630%増)した。

経済・公的資金省のホセ・ガブリエル・エスピノサ(José Gabriel Espinoza)大臣は、USDTをボリビアーノや米ドルと同等に流通させるための技術的評価を進めていると公表。ロドリゴ・パス・ペレイラ(Rodrigo Paz Pereira)大統領も、デジタル資産を担保にした融資や貯蓄口座など、決済に留まらない包括的な金融システムのデジタル化を視野に入れています。

機関投資家向け決済での実績とテザー社の信頼性強化

ボリビア国外でもUSDTの実用性は実証されており、自動車大手の現代自動車(ヒュンダイ)は、アバランチ(Avalanche)ブロックチェーンを介して米国・メキシコ間でのUSDT送金テストを実施。従来の銀行送金で数時間要していた国境を越えた資金移動を、わずか約7分で完了させた。

また、発行元であるテザー社は、準備金に対する市場の懸念を払拭(ふっしょく)するため、2026年3月にKPMG(世界4大会計事務所=Big4)による包括的な監査を実施。約1,850億ドル(約30兆円)規模の裏付け資産の透明性を担保することで、国家レベルでの採用に耐えうる信頼性の強化を図っている。

制度化へ向けた山積する課題

画期的な試みである一方、公式採用までにはいくつかの高い壁が存在している。

国際的な金融監視(FATFグレーリスト)
ボリビアは資金洗浄(マネーロンダリング)対策が不十分な国としてFATF(金融活動作業部会)の「グレーリスト」に掲載されたままである。USDTを国家決済システムに組み込むには、極めて厳格な監視・規制体制の構築が必須となる。
インフラとアクセスの格差
依然として多くの国民が銀行口座や安定したインターネット接続環境を持っておらず、デジタル技術へのアクセス格差という根本的な課題は残されたままである。
法定通貨化ではないという位置づけ
今回の法案は、USDTを法的に強制力のある「法定通貨」にするものではなく、あくまで企業や個人が選択して利用できる「公認された決済手段」として位置づける方針だ。

現在も具体的な実施規則の策定は進行中だが、慢性的なドル不足に悩む他の新興国にとって、ボリビアのこの大胆な経済実験は今後の試金石として大きな注目を集めている。

 

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