インドのUSDTが規制措置による供給ひっ迫で価格急騰

規制措置で価格急騰と摘発されたステーブルコインによる非公式送金

インドの暗号資産市場で、米ドル連動型ステーブルコインであるテザー(Tethre/USDT)の国内価格が急上昇している。

政府当局による法執行や規制強化が相次いだことで、国内のUSDT供給が急激に滞り、通常のドル相場に対する上乗せ額(プレミアム)がこれまでの2倍以上となる8.5%超へと跳ね上がった。メディアの報道によると、週末の暗号資産プラットフォームにおいて、USDTは1ドルあたり102.88インドルピーで取引され、当時の銀行間外国為替レート1ドル=94.65ルピーと比較すると大幅な価格差が生じており、通常は3~4%程度に収まるプレミアムが異常な水準にまで拡大している。

この需給ひっ迫を招いた直接の引き金は、インドの法執行機関である執行局が6月中旬に実施した大規模な強制捜査だ。執行局はベンガルール(旧称:バンガロール)市内の複数拠点を捜索し、暗号資産の決済業者らが仮想デジタル資産を悪用し、250億ルピー(約428.7億円)以上の不正な海外送金を仲介していたと主張している。

当局の調査によると、海外に居住するインド国民が、従来の銀行送金の手続きや書類審査、手数料を回避するためにUSDTを悪用していた。利用者がルピーを特定の企業口座に入金すると、その資金がステーブルコインに換えられて海外へ送金され、現地の取引所で売却されるという仕組みだ。この非公式ルートは、銀行より安価かつ迅速に送金できるだけでなく、国内プレミアムの恩恵で実質的により多くのルピーを手に入れられるため、約2年間にわたり機能していたとみられる。

しかし、今回の摘発によって市場の流動性供給者=マーケットメーカーらが海外からのUSDT調達を手控えるようになり、国内の供給不足に拍車がかかる結果となりました。

全方位で強まる監視の網

インドでは現在、執行局だけでなく、あらゆる規制当局が暗号資産への監視を同時多発的に強めています。

取引記録の保存義務:FIU(金融情報機関)は主要取引所に対し、2026年1月以降、1万ドルを超えるOTC(店頭)取引の全記録(実質的支配者、資金源、送金先ウォレットのアドレスなど)を保存するよう義務付けた。
巨額の脱税特定:所得税局は、取引データや源泉徴収の申告書を精査した結果、88億8,000万ルピー(約152.3億円)を超える未申告の仮想通貨収入を特定。すでに4万4,000件以上の納税通知を発行している。

こうした強硬姿勢の背景には、国際的なマネーロンダリング(資金洗浄)対策機関であるFATF(金融活動作業部会)の報告がある。同報告では、違法な暗号資産取引の多く、2025年実績で1,540億ドル(約25兆円)のうち84%にステーブルコインが使われていると指摘されており、インド政府にとっても法規制の厳格化は急務となっている。

急成長する市場と今後の政策議論

皮肉なことに、規制の圧力が強まる一方で、インドの暗号資産市場は世界屈指の成長を続けている。

国際的な調査によると、インドは3年連続で世界の仮想通貨普及率トップを維持。南アジア地域における取引量は前年同期比で80%増の約3,000億ドル(約48.6兆円)規模に達している。OECD(経済協力開発機構)も、インドへの暗号資産流入規模は韓国、ベトナムに次ぐ世界3位であると言及している。

この“市場の急成長”と“不正利用のリスク”の狭間で、今後の国の出方に注目が集まっている。近く、インド議会の財務常任委員会は、インド準備銀行(中央銀行)や会計士協会と合同会合を開き、ステーブルコインを含む仮想デジタル資産への今後のアプローチについて具体的な協議を行う予定とのことだ。

 

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