ECBラガルド総裁、ユーロ建てステーブルコイン推進に警鐘

ECBとユーロ建てステーブルコインをイメージしたデジタル金融コンセプト画像

ドル支配への対抗策に慎重姿勢

ECB(欧州中央銀行)のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)総裁は、ユーロ建てステーブルコインの拡大は金融安定性や通貨主権へのリスクを伴う可能性があるとして、欧州は中央銀行主導のデジタル金融インフラ整備を優先すべきだとの考えを示した。

ラガルド総裁は、スペイン銀行主催のラテンアメリカ経済フォーラムで講演し、欧州が米ドル建てステーブルコインへの対抗策としてユーロ建てステーブルコインを推進すべきだという主張に反論した。同氏によると、ステーブルコイン市場は6年前には100億ドル(約1.57兆円)未満だったが、現在は3,000億ドル(約47.3兆円)を超える規模へ拡大している。その大半は米ドル建てであり、約90%をテザー(Tether/USDT)とサークル(Circle)が発行するUSDコイン(USDCoin/USDC)トークンが占めているという。

また同総裁は、ステーブルコインには「基軸通貨の国際的影響力を広げる機能」と、「トークン化資産のオンチェーン決済を支える技術的機能」の2つが存在すると説明した。そのうえで、欧州では両者を混同した議論が行われていると指摘した。

さらに、ユーロ建てステーブルコインについては、金融政策の伝達機能を弱める可能性や、銀行預金の流出によって銀行システムへ圧力を与えるリスクがあると警告した。加えて、取り付け騒ぎやペッグ解除、トークン化市場の分断といった懸念にも言及している。

具体例として、2023年のシリコンバレー銀行破綻時にUSDCが一時的にペッグを失った事例を挙げ、金融不安時にはステーブルコインへの信頼が急速に低下する可能性があると述べた。

公的インフラ整備を優先

ラガルド氏は、2025年に署名された米国のGENIUS法にも触れた。同法は、連邦政府によるステーブルコイン監督を通じて、米ドルの基軸通貨としての地位維持を図るものとされている。

一方、欧州では2024年にMiCA(仮想通貨市場規制法)が施行されており、独自の規制体制構築が進められている。現在、欧州の12銀行によるコンソーシアムが、MiCA規制下でのユーロ建てステーブルコイン発行計画を進めている。

これに対し、暗号化企業Zamaの創設者ランド・ヒンディ(Rand Hindi)氏は、USDTが発展途上国におけるドル利用拡大を支えていると指摘した。また、Morphのエコシステム責任者レンナ・バ(Renna Ba)氏は、民間のユーロ建てステーブルコインとデジタルユーロが共存できる環境整備が必要だとの考えを示している。

同総裁は、欧州は民間ステーブルコインモデルを模倣するのではなく、公的インフラを基盤としたトークン化金融システムを構築すべきだと強調した。

ECBは現在、分散型台帳技術(DLT)をTARGETへ接続する「Pontes」プロジェクトを進めており、9月には中央銀行資金によるホールセール決済を開始する予定だ。また、「Appia」ロードマップでは、2028年までに相互運用可能な欧州トークン化金融エコシステムの構築を目指している。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム