ポーランドが仮想通貨法案を拒否しEU唯一の未実施国に

ポーランド大統領府と国旗が並ぶ広場の様子を写した写真

大統領拒否権で仮想通貨規制が停滞

ポーランドでは、カロル・ナヴロツキ(Karol Nawrocki)大統領が主要な仮想通貨規制法案に拒否権を発動し、大きな政治的対立が生まれている。

仮想通貨コミュニティでは歓迎の声が上がる一方、政府側は強く反発している。今回の決定により、100万人以上のポーランド人投資家は規制の整備が進まない状況に置かれている。拒否された法案は、EU(欧州連合)のMiCA(仮想通貨市場規制)を国内で実施する目的で作成されたものだが、内容は100ページを超え、近隣諸国の簡素な枠組みよりもはるかに厳しいものとなっていた。ナヴロツキ大統領は、市民の自由や財産の保護に対する脅威を理由に、この法案が過剰であると指摘した。

最大の争点は、当局が最小限の監視で仮想通貨関連のウェブサイトをブロックできる条項である。大統領府は、この仕組みが恣意的に運用され、ユーザーのアクセスを不当に制限する可能性を懸念している。また、スタートアップ企業に不利となる過剰な監督手数料や、外国企業を優遇する可能性についても問題視された。

仮想通貨業界のリーダーたちは以前からこの法案を過度な規制であると批判していた。ZondaCryptoのプシェミスワフ・クラール(Przemysław Kral)CEO(最高経営責任者)は、違反者に最大1,000万ズウォティ(約4.3億円)の罰金や懲役の可能性がある点を問題視し、基本的な開発活動まで阻害しかねないと指摘していた。

反発する政府と未整備の規制環境

大統領の決定を受けて、アンジェイ・ドマンスキ(Andrzej Domański)財務大臣は「混乱を選んだ」と強く批判しており、既に投資家の約20%が詐欺被害を受けているとしたうえで、適切な規制がなければリスクが拡大すると懸念を示した。

ラドスワフ・シコルスキ(Radosław Sikorski)副首相も同調し、保護策が進まない責任は大統領にあるとした。

拒否権を覆すには、議会の5分の3以上の賛成が必要だが、この基準を満たすことは難しいと見られている。これにより、ポーランドはEU加盟国の中で唯一、MiCAをまだ国内に実施していない国となった。

2026年7月1日にはEU全域でMiCAが発効される予定であり、仮想通貨企業は他国での登録を求められる可能性がある。これにより、税収が海外へ流出するリスクも指摘されている。市場関係者や投資家は、ポーランドの規制がどのように整備されるのか、今後の動きを注視している。

 

ABOUTこの記事をかいた人

2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム