スケーラビリティとプライバシーで次世代イーサリアムへ
イーサリアム(Ethereum)共同創設者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は、大阪開催のEDCON 2025で新たな技術ロードマップを発表した。
短期ではL1の信頼性と応答性を高め、中期ではレイヤー2(L2)の相互運用性を前進させ、長期では量子耐性と形式検証を柱に据える。オンチェーンの書き込みと読み取りを分けたプライバシー強化も要点に挙げ、来年までにネットワークを10倍に成長させ、スループットとユーザビリティを向上させる目標を示した。
短期と中期の強化ポイント
短期の最優先はL1の信頼性とセキュリティだ。分散性を保ったままガス上限を引き上げ、ブロックレベルのアクセスリスト、ZK-EVM、ガス価格の再調整、スロット最適化などで処理効率を底上げする。これによりメインネットの応答性が高まり、基盤としての安定性が増す。
中期はL2の相互運用性に焦点を当てる。ロールアップ間のトラストレスな資産移転や証明の集約、より迅速な決済を進め、ユーザーがシームレスに資産を移動できる体験を整える。スロット高速化と強力なファイナリティに向けては、消失訂正符号や三段階ファイナライゼーションの活用を視野に入れる。これらの施策でユーザー体験を引き上げつつ、分散性とのバランスを取る。
長期ビジョンとプライバシー保護
長期ビジョンは「Lean Ethereum」だ。セキュリティとシンプルさ、最適化を重視し、量子耐性暗号の導入やプロトコルの形式検証、ハッシュや署名、ゼロ知識証明など理想的な暗号プリミティブの採用を進める。
スケーラビリティだけでなく、分散型エコシステムの堅固な基盤としての信頼性を高める狙いがある。プライバシーは発表の中心テーマの一つだった。オンチェーンの「書き込み」(トランザクション、投票、DeFi操作など)は、クライアント側のゼロ知識証明や暗号化投票、ミックスネットワーク由来のリレーで匿名性を確保する。一方「読み取り」(ブロックチェーン状態の取得)は、信頼できる実行環境やプライベート情報検索、部分状態ノード、ダミークエリを用いてアクセスパターンの漏えいを抑え、必要なデータだけを提示する設計を目指す。
ブテリン氏は、アジアの開発者や研究者に対してAI(人工知能)の活用を促し、学習とオンボーディングを加速するよう呼びかけた。日本と中国の開発文化の違いにも触れ、それぞれの強みがイーサリアムの進化に貢献していると述べた。