銀行主導でブロックチェーン型の国際送金に移行
シティグループ(Citigroup)はコインベース(Coinbase)と提携し、法人および機関投資家向けにステーブルコイン決済インフラを構築すると発表した。
従来のSWIFT(国際銀行間通信協会)に依存した送金の遅延と高コストを解消し、ブロックチェーンを活用した即時かつ低コストの決済へ移行する狙いだ。今回の提携により、シティの顧客はコインベースのオンランプとオフランプを通じて法定通貨による取引を行い、必要に応じてオンチェーン流動性へアクセスできる。これにより、決済時間は数日から数分に短縮され、国際決済コストは最大30%削減される見通しだ。
ステーブルコインが企業決済の実用段階に入る
シティの決済部門責任者デボパマ・セン(Debopama Sen)氏は、顧客が24時間稼働の即時決済や条件付き送金などの機能を求めていると述べ、今後数カ月以内にオンチェーン決済を実装する方針を示した。
シティのアナリスト、ロニット・ゴーズ(Ronit Ghose)氏はステーブルコイン市場が今後5年で1兆ドル(約152兆円)規模に成長する可能性を指摘している。背景には、米国で成立したSenius 法があり、発行体に国債などの裏付けを義務付けることでステーブルコイン利用の法的明確性が高まった。これにより、決済利用が急拡大している。
コインベースはCaaS(Crypto-as-a-Service=コンテナ化されたアプリケーションの管理、デプロイするクラウドベースのサービス)部門を通じ、世界250以上の銀行・金融機関と提携し、カストディや決済、取引の基盤を提供している。同社グローバルヘッドのブライアン・フォスター(Brian Foster)氏は「銀行が求めるインフラを長年かけて構築してきた」と説明し、今回の提携がエンタープライズ分野での事業拡大を後押しすると述べた。シティはトークン化金融への対応を進め、機関顧客のオンチェーン資金管理を加速させる。
送金の標準がハイブリッド構造へと移る
この提携は、伝統的な銀行がブロックチェーン技術を正式に採用し始めた流れを象徴している。
シティの法人顧客は、コインベースの決済ネットワークを介して法定通貨からステーブルコイン、そして再び法定通貨へと変換するハイブリッドな資金移動を実現できる。この仕組みは、従来のコルレス銀行を介した複雑なプロセスを排除し、24時間365日の送金を可能にする。セン氏は「ステーブルコインはコスト、スピード、効率性の面で顧客体験を変える」と述べており、企業がサプライヤー支払いや請求書決済を即時で行えるようになることで、国際ビジネス全体の流動性が向上する。
こうした変化はシティだけでなく、業界全体に波及している。ウエスタンユニオンはコルレス銀行への依存を減らすためステーブルコイン決済をテスト中であり、Crypto.comは米国で銀行免許を申請している。さらにZelleも国際送金の拡大に向けてステーブルコイン活用を検討している。これらの動きは、法定通貨とデジタル資産の融合が進む新時代の決済モデルを示しており、グローバル金融の再構築が始まっていることを意味する。
シティとコインベースの連携は、仮想通貨が投機ではなく実務領域で機能することを示す重要な節目となる。規制順守と透明性を前提に、銀行業界が自らの内部からブロックチェーンを取り込み、決済の再設計を進めることで、世界的な資金移動の在り方が大きく変わろうとしている。
























