UAE内務省が国際会議で方針を表明
UAEアラブ首長国連邦は、シンガポールで開催された「国際仮想通貨セキュリティアクションウィーク」のワークショップに参加し、世界的な仮想通貨犯罪への対策を強化する方針を発表した。
この会議はセキュア・コミュニティ・フォーラムとマスターカードの共同主催で、各国の法執行機関やテクノロジー企業、民間セクターの代表者が一堂に会した。会議では、仮想通貨を利用した詐欺やマネーロンダリング(資金洗浄)の増加を背景に、国際的な連携と官民協力の必要性が強調された。UAE内務省(MOI)は国際パートナーと連携し、変化する犯罪に積極的に対応していく姿勢を示した。
国際協力と官民連携による対策強化
ワークショップには、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、インターポール、米国国税庁(IRS)、マレーシア王立警察、インドデータセキュリティ協議会などが参加した。
数百人規模の専門家が集まり、詐欺追跡やダークウェブの監視、マネーロンダリング対策に関する高度な技術や調査手法が共有された。特に注目されたのは、法執行機関と仮想通貨取引所や分析企業の協力強化だ。オンチェーンデータの活用を通じ、限られたリソースでも効率的に犯罪者を特定し、迅速に摘発する方法が紹介された。さらに、ダークウェブでの違法取引の増加を受け、違法プラットフォームの監視や運営者の摘発といった課題も議論された。
規制と実際の摘発事例
サミット参加者は、仮想通貨業界の健全な発展には適切な規制が不可欠である点でも一致した。規制は必ずしもイノベーションを妨げるものではなく、むしろ成長を後押しする可能性があると強調された。
実際にドバイでは、仮想通貨を利用して麻薬を購入した男性に懲役10年と罰金が科された。警察は匿名の売人から薬物を入手していた被告を監視の末に逮捕し、所持品から複数の麻薬を押収した。この判決は、仮想通貨を悪用した犯罪に対して厳格に対応するUAEの姿勢を示すものとなった。
UAEにおける仮想通貨導入の最新動向
UAEは犯罪対策強化と並行して、仮想通貨導入を積極的に進めている。中央銀行は2025年10月から12月にかけてCBDC「デジタルディルハム」を発行する予定で、ホールセールとリテールの両方で利用可能な法定通貨として位置付けられる。
またドバイでは、政府主導で不動産のトークン化を推進している。XRP Ledgerを基盤とした「Prypco Mint」プラットフォームを通じ、2033年までに最大160億ドル(約2.3兆円)相当の不動産をトークン化する計画が進行中だ。初回販売には224人の投資家が参加し、そのうち70%がドバイ不動産市場への新規参入者だった。分割所有は2,000AEDから可能だ。
さらにエミレーツ航空は2026年から仮想通貨による航空券決済を導入予定で、ビットコインやイーサリアム、ステーブルコインでの支払いが可能になる。
犯罪対策と導入推進の両立
UAEは「仮想通貨に友好的な管轄区域」であることを打ち出しながらも、国際協力による犯罪対策を強化することで金融市場における信頼を高めている。CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)や不動産トークン化といったイノベーションの推進と、厳格な規制や摘発の実例を組み合わせることで、金融ハブとしての存在感をさらに強める姿勢が鮮明になっている。