攻撃未遂でドルペッグ崩壊、信頼回復が課題に
ビットコイン(Bitcoin/BTC)担保型ステーブルコイン「YU」を発行する Yala (ヤラ)は、攻撃未遂を受けて価格が急落し、1ドルのペッグを大きく乖離(かいり)した。
チームは資金の安全を強調しているが、流動性不足が背景にあり、完全な回復は難しいとの見方が強まっている。攻撃は日曜早朝に発生し、攻撃者が不正に大量のYUを鋳造。トークンは一時0.2046ドルまで下落し、ペッグから大きく外れた。YalaチームはXで攻撃を確認し、ConvertやBridge機能を停止して調査を進めている。
ブロックチェーン分析企業Lookonchainによると、攻撃者はPolygonで約1億2,000万YUを鋳造し、そのうち771万YUをイーサリアム(Ethereum/ETH)とソラナ(Solana/SOL)にブリッジして売却、770万USDCを得た。その後、USDCを1,501ETHに換金し、複数のウォレットに分散したという。残りはイーサリアムとソラナに約2229万YU、ポリゴン(Polygon/MATIC)に約9,000万YUが未換金のまま残っている。
YUは過剰担保のビットコインに裏付けられているが、イーサリアム上のUSDC流動性は34万ドル(約5,000万円)しかなく、時価総額1億1,900万ドル(約175億円)との乖離が大きかった。この流動性不足が売却圧力を受け止められず、暴落を助長する結果となった。
チーム対応と市場の反応
Yalaチームは「すべての資金は安全」と声明し、預けられたビットコインは自己管理型または金庫に保管されていると説明した。
調査にはSlowMistなどのセキュリティ企業が協力している。ConvertとBridgeは無効化されたが、その他の機能は稼働している。
Update: All funds are safe. Bitcoin deposited to Yala remains self-custodial or in vaults, with none lost.
We’ve identified issues and, as a precaution, paused some product features. Please wait for our green light before re-engaging.
A full post-mortem and action plan will…
— Yala (@yalaorg) September 14, 2025
YUは急落後に0.917ドルまで戻したものの、その後再び下落し、執筆時点では0.7869ドル前後で取引されている。完全なペッグ回復は困難とされ、信頼回復には時間を要する見込みだ。
今回の事件は、過剰担保設計のステーブルコインでも流動性が不足すれば安定を維持できないことを示した。攻撃者の不正鋳造と売却が直接の要因だが、背景には流動性の脆弱さという構造的な問題がある。ステーブルコイン市場全体は拡大を続け、規模は3,000億ドル(約44兆円)に迫る。テザー(Tether/USDT)やUSDCに加え、USDeなど新興の通貨が存在感を増している。YUの事例は、急成長する市場においても十分な流動性とセキュリティ管理が不可欠であることを改めて浮き彫りにした。