ビットファームズ、高性能コンピューティング分野への本格転換を模索

ビットファームズがAIおよび高性能コンピューティング(HPC)分野に事業転換を進めている様子を表現したデータセンターのイメージ

ビットファームズが仮想通貨マイニング事業からの脱却を視野に

カナダのマイニング企業ビットファームズ(Bitfarms)は、仮想通貨市場の変動による収益悪化を受けて、高性能コンピューティング(HPC)事業への移行を検討している。

第1四半期には約3,600万ドル(約52.5億円)の純損失を計上しており、前年同期の600万ドル(約8.7億円)から大幅な悪化となった。一方、売上高は33%増の6,700万ドル(約97.8億円)を記録しており、事業構造の見直しが急務とされている。

収益性が悪化するマイニング事業

仮想通貨価格の変動に加え、昨年(2024年)4月に実施された半減期の影響で、ビットファームズの粗利益率は63%から43%に低下。ネットワーク全体のハッシュレート上昇も重なり、マイニング報酬の減少が続いている。

ビットコイン価格は直近の四半期を通じて10万ドル(約1,450万円)超から8万ドル(約1,167万円)未満へと大きく変動し、収益確保が困難な状況となっている。売上高は前年比33%増の6,700万ドルに達したが、それ以上にコストや外部環境の変化が利益を圧迫した。とくに、採算ラインを下回る状況が続く中で、同社は従来のマイニング単体モデルに限界を感じており、収益の柱を再構築する必要に迫られている。この売上増と損失拡大の乖離(かいり)は、単なる一時的な変動ではなく、構造的な収益性の問題を浮き彫りにしている。

AIインフラへの展開と戦略的転換

こうした背景の中、ビットファームズはHPC分野への投資を強化。AI関連アプリケーションの需要増加に応えるため、既存のインフラを活用した事業多角化を進めている。また、米国での拠点拡大も同時に進め、地政学的リスクへの備えとする構えだ。

ベン・ギャニオン(Ben Gagnon)CEO(最高経営責任者)は次のように語っている。

この四半期、当社は米国とHPCへの戦略的転換においていくつかの重要な分野を実行しました。マイニング事業は安定した低資本支出とフリーキャッシュフローの基盤を提供し、2025年と2026年にビットコインが上昇する可能性を活用しながら、米国資産をHPC/AIデータセンターへと発展させる上で有利な立場にあります。

同社は、ペンシルベニア州のHPC施設拡張に向けてマッコーリー銀行から3億ドル(約437.8億円)の信用枠を確保。また、昨年初頭にはパラグアイのマイニング施設を8,500万ドル(約124億円)で売却し、HPC分野へのリソース再配分を進めている。

業界全体の構造変化に対応

ビットファームズの動きは、マイニング専業からの脱却を進める業界の流れとも一致している。マイナーは既存インフラをHPCに転用する形で、AIデータセンター事業への参入を加速させている。

AI関連企業CoreWeaveは3月のIPO(Initial Public Offering:新規公開仮想通貨)で15億ドル(約2,189億円)を調達し、企業価値は200億ドル(約2.9兆円)近くに達した。こうした市場の動きは、HPCおよびAIインフラ事業への期待の高さを示しており、ビットファームズの戦略的転換にも追い風となっている。

今後、HPCへの本格的な移行が実現すれば、ビットファームズは仮想通貨分野にとどまらず、AI領域でも存在感を高める可能性がある。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム