ECBがデジタルユーロを改めて推進
ECB(European Central Bank:欧州中央銀行)は、欧州全域で米ドル連動型ステーブルコインの導入が拡大していることについて、警告を強めており、幹部の一人は、欧州全域への影響を抑制するため、デジタルユーロの導入を提唱している。
欧州中央銀行(ECB)はステーブルコイン導入に対する警告を強めると同時に、米ドル連動型ステーブルコインの影響を抑制するため、デジタルユーロの導入を提唱。ECBのピエロ・チポローネ(Piero Cipollone)専務理事は、現金は「欧州金融システムの礎」であり、唯一の主権的決済手段であるものの、オンラインでは利用できないと述べている。
2025年4月8日に発表された記事の中で専務理事は、米ドル連動型ステーブルコインの影響力の高まりを指摘し、ユーロ圏内での交換手段としての外国ステーブルコインの利用を制限するため、CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)の創設を提唱。デジタルユーロの導入は、クロスボーダー決済におけるユーロの優位性を維持し、外部プロバイダーへの依存度を高めることに役立つと述べている。
米ドル連動型ステーブルコインの世界的な導入拡大と仮想通貨支援策によるリスク
専務理事は、米ドル連動型ステーブルコインの世界的な導入拡大と、米国の仮想通貨友好政策がもたらすリスクを強調した。
このような傾向は、米国へのユーロ預金の流出につながり、国際決済におけるドルの役割をさらに強化する可能性があると警告。欧州の通貨主権を維持するための官民パートナーシップを呼びかけ、欧州の主権通貨であるデジタルユーロがこの取り組みに不可欠であると指摘した。
昨今、欧州では現金よりもデジタル決済が好まれる傾向が高まっており、特にオンラインショッピングにおいて現金の利用が減少している。これらの現状に対して専務理事は、金融包摂とレジリエンス(=回復力)における現金の重要性を認めつつも、オンライン取引で現金が利用できないため、欧州以外の決済システムへの依存を余儀なくされていると指摘した。
デジタルユーロ導入に向けて迅速な行動が求められる
チポローネ専務理事は以前、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米国大統領がドルに裏付けられたステーブルコインを推進していることを受け、ECBはデジタルユーロの導入に向けて迅速に行動する必要があるかもしれないと述べていた。
選挙運動中にステーブルコインへの支持を公約したトランプ氏は、大統領令において、合法的なドル建てステーブルコインの普及を支援する計画を概説。専務理事は、米国のこうした動きは欧州の銀行の顧客基盤を侵食し、ECBが支援するデジタル通貨の必要性を強める可能性があると主張した。
ECBは現在、デジタルユーロの運用方法を検証しているが、欧州議会が関連法案を最終決定するまでは発行は決定しない。
ただし、デジタルユーロという構想は銀行の間で懸念を引き起こしており、銀行は口座から資金が流出するのではないかと懸念を吐露。ECBの実験は継続中だが、専務理事は、特に米国の支援政策の下でのステーブルコインの増加は、欧州が行動を起こす強力な根拠となると強調している。