米財務省がトロンウォレット8件を制裁対象に
米国財務省のOFAC(外国資産管理局)は、大統領令13224号および特別指定国民リスト(SDNリスト)に基づき、イエメンの武装組織フーシ派(フーシーズ)が使用した仮想通貨ウォレット8件を制裁対象に指定した。
これらのウォレットはトロン(Tron)ブロックチェーン上で稼働し、特にテザー(USDT)の送受信に使われていた。
OFACの報告によると、指定されたウォレットでは10億ドル(約1,455億円)規模の取引が行われていた。これらの取引の特定にはブロックチェーン分析が活用され、資金の流れが可視化されたという。資金は武器調達や制裁回避など、フーシ派の軍事・政治活動に利用されていた。
今回制裁されたウォレットは、フーシ派の金融ネットワークにおいて中核的役割を果たしており、米国の個人および企業はこれらのウォレットとの取引が全面的に禁止される。また、関連資産は凍結措置が適用され、一部ウォレットは既に凍結されている。
仮想通貨規制強化への国際的な動き
フーシ派はイランからの支援を受ける武装組織であり、近年は紅海周辺の商業船舶を攻撃するなど、地域情勢を不安定化させている。
フーシ派の資金提供の中心となっているのは、イランを拠点とするサイード・アル・ジャマル率いる金融ネットワークである。アル・ジャマルは2021年に米国から特別指定国際テロリストに指定され、その後も継続して制裁対象となっている。
米財務省のスコット・ベセント(Scott Bessent)財務長官は、「フーシ派は、戦争活動に必要な重要な物資の入手をサイード・アル・ジャマルとそのネットワークに依存している」と述べ、ネットワークへの規制強化を明言した。
制裁措置の目的と影響
トロンウォレットは武力紛争やミサイル・ドローン攻撃などの活動に使用され、イエメンの人道危機を悪化させているとされる。
米国の制裁措置は、仮想通貨を用いた資金調達を妨害し、フーシ派の違法活動能力を低下させることを目的としている。これを受け、各国規制当局による仮想通貨の監視と規制強化が予想される。一方で、中央政府によるウォレットの凍結や制裁措置が、本来Web3が掲げる自由や中立性の原則に反するという意見もある。表面的な報道では捉えきれない複雑な国際情勢の中、仮想通貨を巡る権力の在り方が改めて問われている。