テザーがスワン・ビットコインとの契約紛争に直面
仮想通貨業界の大手ステーブルコイン発行企業テザー(Tether)が、スワン・ビットコイン(Swan Bitcoin)を相手取り、マイニング株取引に関する契約違反と債務不履行を理由に訴訟を提起。この紛争は、仮想通貨業界全体の注目を集めている。
2022年、テザーとスワン・ビットコインはビットコインマイニングベンチャー「2040エナジー(2040 Energy)」を設立。テザーが資金を提供し、スワンが運営を担当する形でスタートした。しかし、裁判所の文書によると、元スワンの従業員がソフトウェアコードやビジネス戦略を不正に流用し、競合会社「プロトン・マネジメント(Proton Management)」を設立したことが紛争の発端となった。
さらに、テザーと共同原告の2040エナジー社は、スワン・ビットコインが共同契約に違反したとしてイングランドおよびウェールズの高等裁判所に訴訟を提起した。
紛争の焦点:契約違反と妨害計画 ~「雨と地獄の業火」計画の疑惑~
テザーは、スワン・ビットコインが仮想通貨マイニング株取引の契約を無効化しようとしたと非難。
さらに、スワンの元従業員が「雨と地獄の業火(rain and hellfire)」と呼ばれる妨害計画を画策し、スワンの採掘事業を弱体化させたと主張している。
一方、スワンのコーリー・クリップステン(Cory Klippsten)CEO(最高経営責任者)は、2040エナジーのCEO職を解任された後、テザーが競合会社プロトンにマイニング事業の管理を移管したと主張。これを「敵対的買収」として批判している。
スワンの被害主張とプロトンの影響
スワンは、元従業員がプロトンを設立し、企業秘密を流用した結果、スワンの事業が弱体化したと訴えている。
また、テザーがこのプロセスを裏で支援していたと主張。特に、テザーの顧問が従業員に退職を勧め、プロトンで同様の事業を模倣する法的支援をした可能性が指摘されている。これにより、スワンは大規模な人員削減やマイニング部門の縮小を余儀なくされ、さらにはIPO(Initial Public Offering:新規公開仮想通貨)計画の断念にも追い込まれたとされる。この一連の事態が、スワンにとって重大な損害となっている。
債務不履行を巡る応酬
2024年8月、テザーはスワンに「債務不履行通知」を送付し、スワンが必要な人員を維持できず、資金提供契約に違反したと非難した。
一方、スワンはテザーが約束していた2,500万ドル(約39億円)の資金提供を履行しなかったことが問題の原因だと反論。この資金が実現していれば、スワンの評価額は10億ドル(約1,560億円)に達した可能性がある。
業界全体に広がる影響
この訴訟は、仮想通貨業界全体で契約の透明性や規制の重要性を再認識させる出来事となっている。
テザーのような大手企業が関与する訴訟は、市場全体における透明性や信頼性を問う重要なケースとして注目されており、今回の紛争は、他の企業間取引にも影響を及ぼす可能性がある。特に、契約違反や企業間の対立がどのように解決されるかが、業界全体のスタンダードを形成する鍵となるだろう。
訴訟の結果は未定だが、仮想通貨業界における取引や契約の在り方が再評価される可能性が高い。両者の法的主張が裁判でどのように扱われるかが、業界全体の未来を左右するだろう。今回のケースが規制強化の議論を加速させるかどうか、また、仮想通貨市場の信頼性向上につながるかが注目される。今後の展開に業界全体の視線が集まっている。