イラン大統領、イスラム仮想通貨の発行を提唱
イランのハッサン・ロウハニ大統領が、米国からの経済制裁に対抗するために「イスラム仮想通貨」の発行を提唱した。同通貨は、米ドルの代わりにイスラム教国間の取引で利用できる仮想通貨。19日にAP通信が報じた。
ロウハニ大統領は、19日から開かれているマレーシア主催のサミットで提案。サミットで登壇したロウハニ大統領は、イスラム教国は、「米国の金融政策や米ドルの支配から自分たちを守る方法を模索すべきだ」と主張。米国から受けている経済制裁について、「横暴な覇権とイジメに用いられている主要な道具」と痛烈に批判した。
米国はイランに対し、経済、貿易、科学、軍事の領域で、1979年から制裁を課してきた。ロウハニ大統領は、「米国は他国の横暴に支配し、圧力をかけるための手段として経済制裁を利用している」と訴えた。その上で、「イスラム諸国で共有できる特別な銀行・金融システムを創設し、地元通貨を使って貿易面で優遇し合う体制」の構築を提案した。加えて、米ドルへの依存を脱却するためにイスラム仮想通貨の創設を主張した。
仮想通貨を発行構想の経緯
今回のサミットは、サウジアラビアとパキスタンは参加を辞退したものの、トルコやカタール、マレーシアのトップが出席。マレーシアのマハティール・ビン・モハマド首相は、ロウハニ大統領に提案に対し、「米国の経済制裁が、イスラム圏経済の発展を妨げている。我々が独自の仮想通貨を利用することは可能だ」と述べた。賛成の意も示し、「自分たちの通貨を使うか、共通の仮想通貨を使うかだ」とした。
トルコのエルドラン大統領は、イスラムの金融に注力すべきだと言及。詳細をまとめるためのワーキンググループを設けることも提案している。またイランは、米国からの経済制裁に対抗するために、様々な措置を講じている。今年7月、仮想通貨マイニングを商業行為として正式に承認した。
なお、米国への対抗策として、仮想通貨発行を見込む国々はイランだけではない。今年11月、新興5カ国「BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)」が、国を跨いだ国家間の決済を目的とした仮想通貨の開発を協議していたことが明らかに。ロシアの政府系ファンドであるロシア直接投資基金(RDIF)が提案し、5カ国で共通の決済システムを作るとしている。