テザー社は、新たなステーブルコイン“CNHT”を数週間以内に発行か
2019年8月21日、テザー社が3つ目のステーブルコイン「CNHT」の発行を、遅くても数週間以内に予定していることが判明。情報メディアサイトcoindeskによれば、仮想通貨取引所Bitfinexの株主であり、OTCトレーダーでもあるDong Zhao(ドン・チャオ)氏が、中国のメッセージアプリWeChatで発言した。
ドン氏が設立した貸仮想通貨とウォレットを事業展開するRenrenBitが、CNHTの立ち上げ時の預金と取引をサポートする予定とのこと。準備金はベルギー銀行で保有されていると思われる。なお、CNHTがどのブロックチェーン上に構築されるかは不明だが、イーサスキャンにはすでにERC20トークンとして2019年4月14日時点で10,000,000 CNHTが用意されている。テザー社はまだ正式なコメントを出していない。
中国政府はどう思う?
ドン氏はWeChatでさらに、「オフショア取引(中国国外で売買)されるであろう人民元のステーブルコインは、海外で取引される人民元の流通を促進し、国際化も進むため、中国の規制当局はCNHTの成功を喜ぶだろう。」と述べている。
なぜなら、米国との関係が悪化している中国は、米ドルが世界経済の中心であることを好ましく思っていないからだ。米ドルに頼らず、自国の通貨である人民元の国際取引がさらに活発化することを考えている。実際、香港との貿易決済では人民元建て決済が盛んに行われている。
ただし、景気の停滞もあり人民元の国際化は必ずしも順調とは言えず、促進するためには、国際金融市場で人民元が多用される必要がある。だからこそステーブルコインであろうが、仮想通貨であろうが、オフショア取引で人民元の流通が増えることは中国政府にとっては願ったりかなったりとも言えるのだ。
米国 vs 中国の貿易戦争縮図?
テザー社はユーロのステーブルコイン「EURT」も発行しているが、やはり今後注目されるのはテザーとCNHTだろう。今月上旬には、中国が中央銀行のデジタル通貨(CBDC)の発行が近いことを発表している。この事を考えると、中国政府はCNHTを快く思わない可能性もある。
しかし、CBDCは国民や国内小売業者の決済手段として利用されることを目的として開発された。テザー社のCNHTはその真逆になる。つまり、必ずしも規制当局に睨まれるとは限らないのだ。むしろ、近年悪化している米中貿易摩擦のシンボル的存在となり、注目だけは多いにされる可能性はある。