仮想通貨などの取り締まりを行うCyberUnit初代最高責任者、15年務めたSECを退任
2019年7月29日、米国証券取引委員会(SEC)サイバー部門の初代最高責任者Robert Cohen(ロバート・コーエン)氏が、15年間務めたSECを8月に退任すると発表。
コーエン氏の経歴。2004年に民間業務からSEC執行部に加入。2015年にはJoseph Sansone氏と共にMarket Abuse Unit(MAU:インサイダー取引や相場操作を見張る機関)の共同最高責任者に任命される。2017年にはサイバー部門の最高責任者に任命された。
サイバー部門設立のきっかけ
2017年9月20日、SECは自身が2016年にハッキング被害を受けていたことを発表。ハッカーはSECの「EDGAR(エドガー)」(米国証券取引所上場企業の財務記録などを管理するソフトウェア)の脆弱性を狙ってデータを流出させた。データには四半期ごとの収益や買収情報も含まれている。
2017年8月には、不正に入手した非公開情報をインサイダー取引に使用したハッカーが、株式市場で利益を得た可能性があるとも述べている。なお、EDGARのソフトウェア脆弱性はすでに修正済み。
2016年の不正アクセスに関連する要因のひとつに、非公開情報が記録されていたノートパソコンの紛失などが挙げられている。ハッカーは未公開情報や機密情報を入手し、そのデータを基にして億単位の利益を不正に稼ぐ。
コーエン氏の主な仕事
ハッキング後のSECの対応はあまりに遅すぎると言えるし、あまりに杜撰である。そして、この件がきっかけとなり、2017年にSECのサイバー部門が立ち上げられたのだ。しかしその後のビットコインブームによって仮想通貨やICOの違反や詐欺の調査が目立ってきた。
サイバー部門は、個人情報を流出させるハッキングなどサイバー犯罪、取引所のサイバーセキュリティ、サイバー関連の市場操作などを監視しているが、暗号資産や仮想通貨(ICO含む)に関する違反や詐欺行為にも厳しい目を向けている。そして、コーエン氏の2年間の仕事は、そのほとんどがICOメインの仮想通貨関連のものばかりになった。
コーエン氏は4年前、MAUの最高責任者に任命された際に「私はこのエキサイティングな新しい役割でジョーと同僚と働けることに感謝しています」と述べていた。氏にとって、SECでの仕事はまさに驚きの連続だっただろう。