暗号資産詐欺:数千万ドル規模の資金洗浄などで男を米国で訴追

米国連邦検察当局が数千万ドル規模の資金洗浄などで男を訴追

米国の連邦検察当局は、世界的な広がりを見せるピッグ・ブッチャリング(豚の屠殺)と呼ばれる巧妙な投資・ロマンス詐欺の手口に関与したとして、ベトナム国籍の男を起訴・訴追した。

被告が管理していたとされる暗号資産ウォレットには、数千万ドル規模の不正資金が流入していたとされており、当局が詳しい経緯やネットワークの実態解明を進めている。今回の訴追劇の発端となったのは、Triangle(トライアングル)と呼ばれる偽暗号資産プラットフォームを巡る巨額の投資トラブルだ。

捜査関係者によると、ある被害者が2024年の6月から8月にかけて、同プラットフォームを通じた投資であると固く信じ込み、総額約1,600万ドル(約25億円)相当の暗号資産を次々と送金してしまったという。しかし、投資した資金や利益を引き出そうとした段階になり、出金が不可能であるという事態が発覚した。

検察側の調べにより、この被害者が送金した資産の一部は、ベトナム国籍のチュン・グエン・ヴァン(Trung Nguyen Van)被告の管理する暗号資産ウォレットへと流れていたことが判明。例えば…、同年8月上旬のわずか数日間において、同一の被害者から数回にわたり計約56万ドル(約8,800万円)超の送金がなされ、その大部分がさらに別の個人用ウォレットへと小分けにして転送されていた形跡が確認されている。

浮き彫りになった5,300万ドル超の莫大な資金移動

捜査の網はTriangleの事例だけに留まらない。米国連邦検事局の発表によると、ヴァン被告のウォレットをさらに詳細に追跡したところ、2018年2月から2024年12月という長期にわたり、米国市民を標的にした一連の通信詐欺スキームから、約5,330万ドル(約84億円)もの莫大(ばくだい)な資金を受け取っていたことが明らかになった。

受け入れられた巨額の資産のほとんどは、その後約5,320万ドル規模の単位で別の口座や宛先へと転送されており、検察側はこれが組織的な資金洗浄=マネーロンダリングの典型的なプロセスにあたると主張している。

米国内の他の被害者たちからも、利用したウェブサイトの名称こそ異なるものの、「オンライン上で勧誘されて高利回りを信じ込まされた末に資金を騙し取られた」という同様の被害報告が相次いで寄せられている。

被害を拡大させるピッグ・ブッチャリングの手口

当局が厳戒態勢を敷いて摘発にあたっているこうした手口は、「ピッグ・ブッチャリング(豚の屠殺)」、あるいは「ロマンス詐欺」の一種として広く知られている。

これは、詐欺グループのメンバーがSNS、出会い系アプリ、メッセージツールなどを通じてターゲットと長期的な信頼関係を構築し、十分に信用させた段階で偽りの投資話へ引き込むという極めて悪質な手法だ。

ミズーリ州西部地区の連邦検事であるR・マシュー・プライス(R. Matthew Price)氏は、こうした詐欺が近年さらに横行し、手口も巧妙化の一途をたどっていると指摘。世界中の多くの人々から数十億ドル規模の資産を奪い去っていると警鐘を鳴らしている。

ロサンゼルス連邦裁判所への出廷を経てミズーリ州西部地区連邦地方裁判所で起訴されたヴァン被告には、現時点で2件のマネーロンダリングの罪が向けられている。

ブロックチェーンの特性と今後の行方

国境を越えて瞬時に多額の価値を移動させることができる暗号資産は、これまでも多くのサイバー犯罪や資金隠しに悪用されてきた。一方で、ブロックチェーン上に刻まれるすべての取引履歴やウォレットアドレスの記録は、完全な隠蔽(いんぺい)を難しくする決定的な証拠になり得る。

もっとも、法執行機関が事態を察知する前に、資産が複数のウォレットやミキシングツール、分散型サービスなどを経由して複雑に細分化されてしまうケースも少なくない。FBI(米国連邦捜査局)をはじめとする捜査機関は、こうしたデジタル時代の犯罪に対抗するため、ブロックチェーンの挙動に即した解析技術を駆使して捜査能力を高めている。

なお、現段階での刑事訴追はあくまで容疑の段階であり、ヴァン被告は裁判で有罪が証明されるまでは無罪と推定される。今回の件は、個別の被害額の大きさと背後にあるネットワークのスケールの双方において、巧妙化する現代の暗号資産犯罪の深刻さを改めて浮き彫りにしている。

 

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