FinCEN、海外拠点組織による127億ドル規模の暗号資産詐欺を摘発

FinCENが海外拠点組織による暗号資産詐欺を摘発

米国財務省の金融犯罪取締ネットワーク:FinCENは、米国内の金融機関から提出された報告書を分析した結果、127億ドル(約1.98兆円超)に上る不正な暗号資産投資詐欺の資金フローを特定した。

分析によると、これらの犯行の背景には東南アジアなどを拠点とする大規模な国際犯罪組織が存在しており、正規の金融インフラを悪用した巧妙な資金洗浄の実態が浮き彫りとなっている。

3.3万件超の報告から見えた被害の拡大

今回の分析は、2023年9月8日から2025年12月31日までにBSA(銀行秘密法)に基づいて提出された33,904件の疑わしい取引報告(SAR)を対象に行われた。

報告の多くはデジタル資産を扱う資金サービス事業者(MSB)から寄せられており、全体の約54.8%(55億ドル:約8,577億円相当)を占めている。また、預金取扱機関からも約64億ドル(約9,980億円)相当(13,810件)の報告がなされた。月間の報告件数は2023年10月時点の590件から、2025年12月には2,482件、月額8億3,350万ドル(約1,300億円)相当へと増加しており、被害の広がりと警戒感の高まりを示している。

なお、FinCENはこの127億ドルという数値について、確定した純損失額ではなく、未未遂取引や重複報告、過去報告の修正なども含まれると補足している。

巧妙化する勧誘プロセスと被害者の資産搾取

詐欺のプロセスは、SNSやマッチングアプリ、あるいは「宛先を間違えた」ふりをした不審なテキストメッセージから始まる。

犯行グループは恋愛相手や友人、ビジネス関係者を装ってターゲットとの信頼関係、いわゆる豚屠殺(ロマンス・投資)詐欺の手法を築いてくる。信頼を得た後、精巧に作られた偽の投資アプリやWebサイトへ誘導する。

初期段階で架空の利益を表示したり、実際に少額の出金に応じたりすることで安心させ、さらに大きな資金を投じさせる。被害者が本送金を行った後に資金を引き出そうとすると、「税金」や「手数料」の名目で追加の支払いを求め、最終的に連絡を断ち切る。

被害者の中には、個人貯蓄や退職金を取り崩すだけでなく、自宅を担保にしたローン(ホームエクイティローン)を組まされて送金させられるケースも確認されている。

海外の暗号化マーケットと「暗号資産ハワラ」の手口

不正に取得された資金の追跡を逃れるため、犯罪組織は「保証マーケットプレイス」と呼ばれる地下インフラを活用している。

ここでは、フィッシングツール、不正口座、偽の顧客確認(KYC)情報、さらには人身売買によって集められた労働力までが専門的に取引され、詐欺の実行からマネーロンダリングまでが完全に分業・外注化されている。

送金プロセスでは、イーサリアム(Ethereum/ETH)やテザー(Tether/USDT)、USDコイン(USDCoin/USDC)などの主要銘柄が使われるが、最終的には価値が安定しているUSDTなどのステーブルコインへ集約される傾向がある。

その後、DeFi(分散型金融)や海外取引所、OTC(店頭)ブローカーを経由して資金を移動させる。近年では、Telegram(テレグラム)やSignal(シグナル)などの暗号化アプリを通じて指示を出し、ステーブルコインで決済を行うデジタルハワラ(地下銀行)の手法が横行しており、資金移動の秘匿化が進んでいる。

国際連携と迅速な被害報告の必要性

東南アジア等の拠点では、強制労働を伴う詐欺拠点が形成されており、UNODC(国連薬物犯罪事務所)の試算でも同地域の詐欺被害額は年間1,000億ドル(約15.6兆円)規模に達するとされている。こうした国境を越える巨大な犯罪経済に対し、単一国の法執行機関だけで対応することは非常に困難である。

FinCENは金融機関に対し、未検証の取引所や不自然なステーブルコインの動きなどレッドフラグ(警告の兆候)への警戒を強めるよう促すとともに、米国愛国者法に基づく情報共有を呼びかけている。

万が一被害に遭った場合、被害者は速やかに取引金融機関へ連絡するとともに、FBIのIC3(インターネット犯罪苦情センター)やシークレットサービスに通報することが推奨されている。FinCENのRRP(迅速対応プログラム)などを通じ、海外のFIU(金融情報機関)と連携した迅速な資産凍結や資金回収の手続きにつなげることが重要となる。

 

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