タイ中央銀行がグレーマネー一掃に向けてUSDTと現金フローを新監査対象に
タイで深刻化するグレーエコノミー(闇経済)や詐欺グループによる不正資金の流出を防ぐため、タイ中央銀行(BOT)が本格的なメスを入れた。
タイSEC(証券取引委員会)とタッグを組み、ステーブルコインのテザー(Tether/USDT)の大口取引や、国内を巡る巨額の現金フローに対する多角的な共同監査を開始した。
タイ国内では近年、中国系組織などが関与するフィッシング詐欺や偽投資(ロマンス詐欺)といった犯罪が激増。2025年には詐欺電話・メールが1億7,300万件に達し、被害額は34億ドル(約5,518億円)規模に上ったと推定されている。
こうした不正な利益は、国境を越えた高速決済が可能なUSDTなどのステーブルコインや、マネーロンダリング(資金洗浄)のネットワークを通じて追跡を逃れるように海外へ移転。実際に警察当局が検挙したケースでは、わずか10カ月で1億2,250万ドル(約198.8億円)以上もの仮想通貨を巡らせた不正ウォレットも発覚している。
新たな規制方針:USDTと物理的な現金を徹底マーク
タイ中央銀行のヴィタイ・ラタナコーン(Vitai Ratanakorn)総裁は地元メディアに対し、「一時的な対処ではなく、複数の対策を同時かつ継続的に実施する」と決意を述べた。
なお、具体的には、以下の分野への監視網を網羅的に広げる。
ステーブルコイン(USDT)の監査
タイでは、暗号資産取引自体は合法だが、中央銀行は「決済手段」としての利用を固く禁じている。国内最大級の取引所Bitkub(ビットカブ)では、USDT/THBの取引が約40%を占める主力取引となっており、当局はSECと連携して「資産隠しや通常の決済網を避ける巧妙な取引」の分析を急いでいる。
物理的な現金の流れの規制
商業銀行などの各機関にコンプライアンスの強化を義務付け、500万バーツ(約2,400万円)を超える現金預金の完全情報開示、高額現金取引の資金源報告。さらに、ビジネス目的が曖昧な、高額紙幣から少額紙幣への大量両替や、金取引・外貨両替取引を厳格な監視下に置くこととなった。
過度な締め付けとの戦い:問われる当局の精度
タイ当局によるこれまでの取り組みは、必ずしも平坦ではなかった。
2025年のマネロン取り締まり時、不正口座の凍結を目的に約300万に上る口座を制限したところ、多くの無実な市民や合法的な企業の日常決済が巻き添えとなり、「取り締まりは失敗だった」とメディアから痛烈な批判を浴びた経緯がある。
今回の「USDTと現金フロー」の監査強化においても、マネロンに携わる真の“悪質アクター”だけをピンポイントで排除しつつ、合法的な個人トレーダーや一般市民への経済的悪影響をどう最小限に抑え込むか、当局の真の対応力が試されている。
























