MIMステーブルコインがドルペッグ崩壊に直面
DeFi(分散型金融)レンディングプラットフォーム「Abracadabra(アブラカダブラ)」が発行する、仮想通貨担保型ステーブルコインMIM(Magic Internet Money)が深刻な1ドル=1MIMのドルペッグ(連動)崩壊に直面し、運営チームが異例の緊急パニックコントロールに乗り出した。
事の発端は6月中旬。MIMの価格は一時0.74ドル(約119.7円)まで下落したのち、一時は0.89ドル(約144円)付近まで持ち直したものの、市場全体の冷え込みや大口の売り圧力、流動性の低下が重なり、水曜日には0.49ドル(約79.3円)付近へと文字通り「半値以下」まで大暴落。この背景には、暗号資産市場全体が24時間で約600億ドル(約9.7兆円)規模の急落を見せ、ビットコインが6万ドル(約970万円)を割り込んだという地合いの悪さも影響した。
実はAbracadabra側も手をこまねいていたわけではない。ペッグが外れ始めた2026年6月15日(月曜日)の時点で、主要DEX(分散型取引所)のCurve Finance(Curve Finance)の流動性プールに10万ドル(約1,600万円)を緊急注入。これは直前のシステム変更に伴う予期せぬ資金流出に対抗し、プールのバランスを維持するための「防衛策」だったが、結果としてこの程度の資金供給では強烈な売り圧力を防ぎきることはできなかった。
逆転の発想で金利引き上げによる供給絞り込み
状況を重く見たAbracadabraチームは、「Cauldrons(コールドロン、意味:大釜)」と呼ばれる、すでに稼働を終えている古い市場を含むすべての融資市場において、貸出金利を段階的に引き上げるという緊急措置を断行した。
一見、利用者を苦しめるだけに見えるこの利上げには、緻密な数理的計算と市場心理を突いた狙いがある。金利が上がることで、MIMを借りたままポジションを維持するデメリットが大きくなる借入コストの増大。 現在、市場でMIMは「0.5ドル前後」の割引価格で投げ売りされているがし、プロトコルへの借金は「1MIM=1ドル換算」で相殺され、借り手は市場で安くMIMを買い集めて返済に充てれば、実質的に格安で債務を帳消しにできる絶好のチャンスが生まれる。
この仕組みにより、ユーザーによる自発的な返済と、それに伴うMIMのバーン(Burn:永消滅)」が加速。市場に流通するMIMの絶対量を強制的に絞り込むことで、需給バランスを急回復させるのが狙いだ。
過剰担保型でも防げない流動性の罠
MIMは2021年5月に誕生した米ドルペッグ通貨で、米ドルや国債などの現物資産を裏付けとする法定通貨担保型とは異なり、利息を生む暗号資産をプロトコルに預け入れることで発行される暗号資産(過剰)担保型を採用している。
本来、このタイプはアルゴリズム型ステーブルコインよりも安全性が高いとされている。しかし今回の一件は、どれだけ強固な裏付け資産があろうとも、「市場の流動性が枯渇し、プール内のバランスが崩れれば、簡単にペッグは崩壊する」というDeFi特有の根深い脆弱性を浮き彫りにした。
チームによる「利上げ作戦」は、早くも目覚ましい効果を発揮している模様で、MIMの価格は一時0.95ドル(約153.7円)付近まで急回復を遂げており、供給量の縮小が機能していることを証明。運営チームは「最優先事項はシステムの市場構造を改善し、健全で強固な流動性を持つペッグ状態へMIMを戻すこと。そして失われた信頼を回復することだ」と表明しており、完全に元の1ドル水準へ安定させるための監視を続けている。
























