ブータン国家デジタルIDをイーサリアムに全面移行

ブータンの国家デジタルIDシステムがイーサリアムブロックチェーンに統合されたことを象徴するイメージ。伝統的な建築と未来的なデジタルネットワークを融合。

世界初として発表の国家規模Ethereum採用でデジタル主権を拡張

ブータン政府は、NDI(国家デジタルアイデンティティ)をイーサリアム(Ethereum)ブロックチェーンへ全面移行する計画を正式に始動した。

約80万人の国民がブロックチェーン上で本人確認をし、政府サービスに安全にアクセスできる仕組みを導入する。移行完了は2026年第1四半期を予定しており、国家規模で公共ブロックチェーンを採用する初の事例となる。

1015年10月13日(月曜日)、首都ティンプーで行われた発表式典には、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン(VitalikButerin)氏、イーサリアム財団代表の宮口綾氏、ブータンのジグメ・ナムゲル・ワンチュク(Jigme Khesar Namgyel Wangchuck)皇太子殿下が出席した。宮口氏はX上で「ブータンが国家デジタルIDをイーサリアム上に固定した歴史的瞬間を迎えた。ブテリン氏とともに式典に参加できたことを光栄に思う」と述べた。

日本語訳:
今日、ブータンは歴史的な節目を祝い、国家デジタルIDシステムをイーサリアム上に構築した最初の国となりました。ヴィタリック・ブテリン氏、私とイーサリアムコミュニティを代表して、王室陛下がご臨席されたこの立ち上げ式典に出席できたことを光栄に思います。

宮口氏はさらに、「イーサリアム10周年という節目に、国家的統合が実現したことは象徴的であり、オープンで安全なデジタル社会への第一歩となる」と続けた。

NDIの進化とイーサリアム移行の意義

NDIは2023年に制定された国家デジタルアイデンティティ法を基盤とし、個人情報を開示せずに身元を証明できるSSI(自己主権型アイデンティティ)を採用している。

当初はHyperledger Indy上で構築され、2024年にはポリゴン(Polygon)へ移行。ゼロ知識証明(ZK-Proof)やCREDEBLプロトコルを統合し、透明性とプライバシーを両立させてきた。今回の最終移行によって、許可制フレームワークから完全に分散化された検証基盤へと変わる。

新システムでは、生体認証を利用したモバイルウォレットを通じて、国民が自身のデジタルIDを管理できる。ゼロ知識証明により、個人データを開示せずに認証を完了する仕組みを採用。GovTechのジグメ・テンジン(Jigme Tenzing)技術庁長官は「イーサリアムは世界で最も分散化されたネットワークの一つであり、国家インフラとしての耐障害性と信頼性を両立できる」と強調した。

ブロックチェーン国家戦略と経済的展開

ブータンの「デジタル・ドゥルキュル」構想は、技術革新と国家主権の融合を目指す長期ビジョンであり、今回のイーサリアム統合はその中核を担う。

政府はイーサリアム財団と連携し、ハッカソン開催、開発者支援、オンチェーンサービスの拡大を推進。公共領域から民間まで、本人確認やデータ共有の効率化が進む見通しだ。

ブータンは仮想通貨分野でも存在感を強めている。政府系投資機関のDruk Holding Investments(DHI)は、Bitdeer Technologiesと提携し、5億ドル(約754億円)規模のマイニング拡張を進行中。BitcoinTreasuriesのデータでは、同国の政府保有量は6,371BTCに達し、世界第6位を占める。

こうした動きは、デジタルIDシステムと仮想通貨政策を両輪とした国家戦略を象徴している。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム