プリンス・グループ主導の国際詐欺網を追跡で史上最大規模の没収措置
米国当局は、カンボジアを拠点とする「豚の屠殺(Pig Butchering)」型の強制労働仮想通貨詐欺ネットワークを摘発し、史上最大規模となる約150億ドル相当のビットコインを押収した。
首謀者はカンボジアの実業家でプリンス・ホールディング・グループ創業者の陳志(Chen Zhi)氏とみられ、米国史上に残る大規模な金融犯罪事件として国際的な注目を集めている。
DOJ(米国司法省)は2025年10月14日(火曜日)、150億ドルに相当する127,271BTC(約2.26兆円)の管理権を確保するため民事没収訴訟を起こした。この資産は、カンボジアの強制労働詐欺ネットワークが人身売買被害者を使い、世界規模で仮想通貨投資詐欺を実行させていたものとされる。陳氏は「ヴィンセント」との別名でも知られ、プリンス・ホールディング・グループを隠れ蓑に国際的な詐欺活動をしていたとみられる。
詐欺の手口と人身売買の実態
捜査当局によると、被害者はITやマーケティング分野の虚偽求人を通じて勧誘され、カンボジア到着後に監禁されていた。
被害者たちはメッセージアプリやSNSを使い、世界中の投資家を標的とする「豚の屠殺」詐欺を強要されていた。詐欺はオンライン上で友情や恋愛関係を装って始まり、信頼を得た上で偽の仮想通貨投資プラットフォームへと誘導。送金された資金は100社以上のダミー企業ネットワークを経由して洗浄されたとされる。
アムネスティ・インターナショナルや米国財務省の推計では、同様の詐欺による被害は2024年だけで40億ドル(約6,029億円)を超え、前年比40%増。カンボジアは詐欺拠点として急速に台頭しており、30カ国以上の被害者が確認されている。
陳氏は逃亡中、デジタル金融犯罪の闇を露呈
押収されたビットコインは現在、米国政府の管理下にあり、法的手続きが進行中である。陳氏は依然逃亡を続けており、米司法省は国際的な捜査協力を通じて追跡を強化している。
今回の事件は、単なる金融詐欺を超え、人身売買とデジタル金融犯罪が融合する現代型犯罪の象徴とされる。DOJはこの押収を通じ、国際的な仮想通貨犯罪ネットワークへの対抗姿勢を改めて示した。