フィデリティがブラックロックに挑戦
資産運用大手Fidelity(フィデリティ)は、イーサリアム(Ethereum)上でトークン化国債ファンド「FDIT(フィデリティ・デジタル・インタレスト・トークン)」を立ち上げた。
SEC(米国証券取引委員会)への提出書類とオンチェーンの記録で確認されているが、公式発表は行われていない。運用資産はすでに2億ドル(約294.8億円)を超え、BlackRock(ブラックロック)が展開する「BUIDL」ファンドと競合する位置付けとなる。
FDITの仕組みと運用
FDITは「フィデリティ・トレジャリー・デジタル・ファンド(FYOXX)」をベースに、同ファンドの1株を表すトークンをイーサリアム上で発行する。
ポートフォリオは米国債と現金で構成され、投資家はオンチェーンで米国債担保証券に直接アクセスできる。運用は8月に開始され、手数料は年率0.20%
、カストディはバンク・オブ・ニューヨーク・メロンが担う。現在の保有者はわずか2名にとどまるが、残高は2億ドルを超えている。
静かなローンチと市場での意味
年初にSECへ提出した書類では、Fidelityが自社国債ファンドにオンチェーン株式クラスを設立する承認を求めており、今回のFDITはその計画を具現化したものである。
公式発表はないが、RWA(現実世界の物質的資産)のトークン化を推進する姿勢を示しており、従来金融とブロックチェーンを結びつける取り組みの一環といえる。
拡大する市場と成長余地
トークン化国債市場は急速に拡大している。BlackRockの「USD Institutional Digital Liquidity Fund(BUIDL)」は20億ドル(2,948.7億円)超の資産を運用し最大のプレーヤーとなっている。
Franklin Templeton(フランクリン・テンプルトン)やWisdomTree(ウィズダムツリー)も同市場に参入し、規模は70億ドル(約1兆円)を超え、さらにマッキンゼーは、2030年までにトークン化証券の市場価値が2兆ドル(約294.9兆円)に達する可能性を指摘しており、フィデリティの参入は成長トレンドを一層加速させるだろう。