米国最高裁、コインベース(Coinbase)ユーザーに対するIRS訴訟で不利な判決

米国最高裁がコインベースユーザーに対するIRS訴訟で再審理を拒否

米国最高裁は、税務調査においてIRS(内国歳入庁)がコインベース(Coinbase)ユーザーデータへのアクセスを許可した1976年の判決の再審理を却下した。

コインベースが取引データを提出したことを受け、コインベース利用者が、IRSに送信されたデータについて憲法修正第4条に基づく権利を侵害されたと主張していた訴訟の審理を拒否。ユーザーのジェームズ・ハーパー(James Harper)氏は、召喚状が憲法修正第4条で保障された権利を侵害していると主張していた。

この訴訟は、IRSが「John Doe(ジョン・ドウ)」召喚状(※1)でコインベースに対し、特定利用者のデータを提出するよう強制したことに端を発しており、ハーパー氏は2020年に連邦税徴収機関を提訴。同氏は当初、IRSとその職員が「(ハーパー氏の)個人金融情報を不法に捜索・押収」し、合衆国憲法修正第4条に違反したと主張。銀行などの第三者が保有する記録はプライバシー権の対象外であると宣言した1976年の判決の再審理を裁判所に求めた。

(※1)ジョン・ドウ・サモンズ(John Doe Summons)召喚状とは…
ジョン・ドウ(John Doe)は、日本の“名無しの権兵衛”や山田太郎、山田花子などにあたる言葉で、米国、英国、カナダの法制度において、人物の実名が不明または意図的に隠されている場合に用いられる仮名の事を指しており、ジョン・ドウ・サモンズ(John Doe Summons)は「匿名召喚状」の事を指す。

米国最高裁はIRS召喚状を棄却

米国最高裁は、コインベースに対し1万4,000人以上の顧客の取引情報を開示させる召喚状を発行する権限がIRSにあったか否かについて審理を拒否したと大手メディアのブルームバーグが報じている。

報道によると、米最高裁は、IRS召喚状の合法性に異議を唱えていたコインベース利用者の上訴を棄却した理由を説明できなかったという。利用者は、IRSが主要仮想通貨取引所を通じて自身のデータにアクセスしたことで、憲法修正第4条に基づく権利を侵害したと主張。具体的には…、ハーパー氏は、顧客には銀行が保有する記録に関するプライバシー権がないとした1976年の判決を裁判所が再検討するよう要求。今回の最高裁の判決は、1976年の判決を支持するものであり、この規則が金融サービスを提供する仮想通貨プラットフォームにも引き続き適用されることを示唆している。

1976年、米国最高裁判所は、銀行などの第三者が保有する記録には、憲法修正第4条は適用されないとの判決を下した。この憲法修正第4条は、個人を不当な捜索や押収から保護する法律である。

今回の最高裁判所の判決に先立ち、連邦控訴裁判所はIRSの召喚状を支持し、コインベースがIRSにユーザーデータへのアクセスを許可。この召喚状は、仮想通貨のキャピタルゲインの広範な過少申告疑惑に関する調査の一環であったとのことだ。

コインベースはハーパー氏に同調。米国最高裁判所にこの件の判決を求め、IRSの召喚状に対して全力を尽くして抵抗したものの、最終的には法廷侮辱罪を回避するためにユーザーデータを提出せざるを得なかったことを明らかにした。なお、最高裁判所がこの件で異なる判決を検討しない限り、下級裁判所の判決は維持され、米国の仮想通貨ユーザーのデジタルプライバシー権に関する重要な先例となることが予想されている。

 

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