韓国の金融機関が進めるステーブルコイン構想の概要
韓国の大手銀行が、韓国ウォンに連動するステーブルコインの発行を計画している。
中央銀行である韓国銀行は慎重な立場を示しており、今回の構想は主に民間主導によって進められている。民間銀行が発行と管理を担い、ブロックチェーン技術を活用してウォン決済の利便性向上を図る。
この構想では、米ドル建てのステーブルコインに対する依存を軽減し、デジタル資産市場での主導権確保を目指す。発行モデルは「信託型」と「預金トークン型」の2案が検討されている。
民間主導による実用化と法整備の進展
Woori Bank(ウリィ銀行)やShinhan Bank(新韓銀行)を含む韓国の大手銀行8行(KB国民銀行、農協銀行、韓国産業銀行、水協銀行、シティバンク・コリア、SCファースト銀行)が、オープンブロックチェーンと分散型ID(DID)アライアンス、韓国金融通信決済院(KFTC)と共にコンソーシアムを結成。ウォンに連動するステーブルコインの発行に向けた合弁事業を推進している。
この取り組みは、韓国における民間銀行主導の本格的なステーブルコインプロジェクトの先駆けとされ、規制当局の承認を前提に2025年末から2026年初頭の合弁会社設立が見込まれている
。
商標出願と導入準備の加速
KB国民銀行は、韓国知的財産権情報院(KIPRIS)に「KBKRW」「KRWKB」など17件の商標を出願しており、仮想通貨関連ソフトウェアやブロックチェーンベースの取引管理に関連する内容が含まれている。
これにより、同行がステーブルコインの導入に向けた準備を進めていることがうかがえる。
政治的後押しと法制度の整備
李在明(イ・ジェミョン)大統領は、仮想通貨政策に前向きな姿勢を示しており、選挙公約でもウォン建てステーブルコインの推進を明言していた。
これを受け、民主党の閔秉徳(ミン・ビョンドク)議員は「デジタル資産基本法案」を提出。ステーブルコイン発行に必要なライセンス制度や最低資本金(5億韓国ウォン=約5,300万円)などの枠組みを整備している。
国際的な流れとの連携と段階的な実証展開
韓国は2023年からCBDCパイロットプログラムを進行しており、今回の構想はその延長線上にある。送金や決済の利便性向上に加え、金融包摂や業務効率化といった分野での活用が期待されている。
一方で、韓国銀行のイ・チャンヨン(李昌鎔)総裁は、ウォン建てステーブルコインの導入により、ドル建てステーブルコインの需要がかえって高まる可能性を指摘し、外貨管理への影響を懸念している。副総裁のユ・サンテ(柳相台)氏も、まずは厳格な規制下にある銀行のみに発行を認め、段階的に非銀行部門に拡大する方針を示した。
韓国では今後、民間の技術革新と政府の制度整備が連携しながら、ステーブルコインの健全な導入と活用が模索されることになる。慎重な姿勢を維持しつつも、実用化に向けた足取りは着実に進んでいる。送金や決済の利便性向上に加え、金融包摂や業務効率化といった分野での活用が期待されている。