アンカレッジに対する調査と業界への波紋
連邦認可を受けた仮想通貨銀行「アンカレッジ・デジタル(Anchorage Digital)」が、DHS(米国土安全保障省)の調査対象となっていることが米金融誌『バロンズ』の報道により明らかになった。
調査はDHS傘下の「エルドラド・タスクフォース(EDTF)」によって実施されており、同行の内部慣行や規制順守体制が問われている。過去にマネーロンダリング(資金洗浄)対策の不備で是正命令を受けた経緯があり、今回の調査は業界全体に影響を及ぼす可能性がある。
現在の調査は、予備的な段階にあり、具体的な告発や法的措置には至っていない。ただし、銀行規制や資金洗浄に関する重大な懸念が浮上しており、同社の規制対応能力に再び疑念が向けられている。
米初の連邦認可仮想通貨銀行に再び規制の目
アンカレッジ・デジタルは2021年、OCC(米通貨監督庁)からナショナル・トラスト・バンクとしての認可を取得し、米国で初めて連邦認可を受けた仮想通貨銀行となった。
しかし2022年には、銀行秘密法(BSA)およびマネーロンダリング防止(AML)規制の不備を指摘され、OCCから是正命令を受けている。OCCは当時、アンカレッジに対し、内部監査やリスク評価、報告体制の整備が不十分であると警告していた。
今回の調査は、こうした過去の行政処分に続く動きとして受け止められており、米国内で進む仮想通貨規制強化の一環とされている。
ブラックロックとの提携も、揺れる信頼性
アンカレッジ・デジタルは現在、ブラックロック(Blackrock)が運用するビットコインETF「iShares Bitcoin Trust」のカストディアンを務めており、機関投資家向けのサービスを中心に仮想通貨インフラを支えている。
また、同社はOCCの監督下で複数の仮想通貨関連サービスを展開しており、銀行機能に加えて証券保管業務なども手がけている。こうした事業の広がりを背景に、今回の調査が及ぼす影響は小さくないとみられている。業界関係者の間では、今後も同様の調査が他の事業者にも及ぶ可能性があるとの見方が広がっており、アンカレッジの対応が仮想通貨業界全体の規制の方向性を左右する試金石となる可能性がある。
今後の調査の進展によっては、同社のライセンスや事業継続に影響が及ぶことも懸念されており、仮想通貨業界への波及にも注目が集まっている。