米国財務省がトルネードキャッシュの制裁を解除
OFAC(米財務省外国資産管理局)は、著名な仮想通貨ミキシングサービスであるトルネードキャッシュをSDN(特別指定国民)リストから削除したが、創設者への制裁は維持した事を発表した。
OFACは、分散型仮想通貨ミキサーのトルネードキャッシュに対する制裁を解除し、米国民による利用を事実上合法化した。当局は、トルネードキャッシュを制裁リストから削除したほか、創設者の1人であるローマン・セミョーノフ(Roman Semenov)氏への制裁は維持した事を2025年3月21日(金曜日)付けの公式発表で発表した。
トルネードキャッシュの公式サイトとスマートコントラクトは、盗まれた資産を洗浄するために犯罪者が広範囲に悪用できるようにする役割を果たした疑いがあり、2022年8月から財務省によってブラックリストに登録されていた。今回の措置は、北朝鮮サイバー軍ラザルス(Lazarus)に関連する取引を含むマネーロンダリング(資金洗浄)活動を促進したとして同プラットフォームを非難した外国資産管理局による2022年8月の制裁を覆すものだ。スコット・ベッセント(Scott Bessent)財務長官は、今回の決定について、次のように述べている。
デジタル資産は、米国民にとって革新と価値創造の大きな機会を提供します。デジタル資産業界を北朝鮮やその他の違法行為者による悪用から守ることは、米国のリーダーシップを確立し、米国民が金融革新と包摂の恩恵を受けられるようにするために不可欠です。
権限を超えたOFAC
2019年に開始されたトルネードキャッシュは、ユーザーが仮想通貨の送金元と送金先を難読化できるようにすることで取引のプライバシーを強化するイーサリアム(Ethereum)ベースのプロトコルだ。
このサービスは金融プライバシーを求める個人を対象としているが、悪意のある行為者によって違法資金のロンダリングに悪用されていることもある。当局は、ラザルスを含む犯罪組織が、2022年8月の時点でミキシングツールを使用して70億ドル(約1兆円)を超える仮想通貨を資金洗浄したと主張している。
2022 年の財務省によるトルネードキャッシュへの制裁を受けて、このツールの正当な使用を主張し資金を凍結されたユーザーは、ジャネット イエレン(Janet Yellen)財務長官、OFAC、FinCENのアンドレア・ガッキ(Andrea Gacki)ディレクターを訴えた。コインベース(Coinbase)はこの訴訟を支持しました。
しかし2024年11月26日、第5巡回控訴裁判所は原告に有利な判決を下し、トルネードキャッシュのスマートコントラクトは国際緊急経済権限法の下で「財産」として適格ではないため、OFAC は権限を超えたと判断。さらに、裁判所は判決で次のように判断した。
われわれは、トルネードキャッシュの不変のスマートコントラクト(プライバシーを可能にするソフトウェアコードの行)は外国人または団体の「財産」ではないと判断し、IEEPAの下でブロックすることはできず、OFACは議会で定義された権限を逸脱した。
財務省は、2025年3月18日にトルネード・キャッシュをSDNリストから削除する意向を発表し、2025年3月21日までにリストから削除を完了。OFACは、制裁対象のままであるセミョーノフ氏の指定も変更し、サイバー対応活動のタグは削除されたものの、北朝鮮関連の指定は維持されているままとなった。
プラットフォームがブラックリストから削除されたものの、トルネードキャッシュの創設者であるローマン・ストーム(Roman Storm)氏とローマン・セミョーノフ氏は、引き続き法的課題に直面。2人は、2023年8月に、プラットフォームの運営に関連するマネーロンダリングと制裁違反で起訴されている。