韓国銀行のCBDC試験運用、10万人が参加
韓国銀行(Bank of Korea)は、CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)の大規模な試験運用デジタルテストプロジェクト「漢江(Hangang)」を2024年4月から6月にかけて実施することを発表した。
この試験では、10万人の参加者が実際の取引環境でCBDCを利用し、その有用性や技術的な課題を検証する。韓国政府のデジタル金融戦略の一環として行われ、将来的なCBDC導入の可能性を探ることが目的とされている。
「漢江」CBDC試験の狙いと技術的ポイント
韓国銀行が主導する「デジタルテストプロジェクト漢江」は、商業銀行や金融機関と連携して実施される大規模な試験運用である。
試験では、銀行口座を持つ10万人の一般市民がランダムに選定され、デジタルウォレットを用いた取引のシミュレーションを行う。QR決済を活用したモバイルバンキングアプリによる支払いや、CBDCのトークン化、商業施設やオンラインショップでの利用が想定されている。
CBDCの技術基盤について、韓国銀行は詳細を公表していないものの、ブロックチェーン技術の採用も含めた複数の選択肢を検討しているとみられている。現在のところ、中央集権型のデジタル台帳システムをベースにした設計が有力視されており、試験では、取引処理速度や決済の安全性、デジタルウォレットとの互換性、プライバシー保護やマネーロンダリング(資金洗浄)対策などが評価対象となる。また、CBDCの活用が商業施設でのリアルタイム決済の実現や取引コスト削減につながるかについても検証される。
主要銀行の関与とCBDCの影響
この試験には、KB国民銀行、新韓銀行、ハナ銀行、ウリ銀行など7つの主要銀行が参加する。それぞれの銀行はCBDCを活用した預金トークンを発行し、決済インフラとの統合を進め、商業施設での実証実験を実施する予定だ。CBDCの預金トークンの最大保有額は100万ウォン(約10万円)に設定され、最大500万ウォン(約50万円)まで追加可能となっている。
市場と政府の動向
この試験運用の発表を受け、仮想通貨市場や金融業界では関心が高まっている。
韓国のCBDCは、既存のデジタル決済手段との互換性を持ち、政府主導のデジタル金融インフラ構築において重要な役割を果たすと考えられている。特に、韓国の金融機関やフィンテック企業は、CBDCの導入が商業銀行の業務効率向上やキャッシュレス化の加速に寄与する可能性があると見ている。
加えて、韓国銀行はCBDCの炭素排出量取引シミュレーションへの適用も検討しており、環境問題への貢献も期待されている。また、政府はデジタルバウチャー管理プラットフォームの導入を計画しており、政府補助金の効率的な配布や追跡が可能になると考えられている。
韓国CBDCがもたらす世界的な変化
韓国のCBDC試験運用は、アジア圏におけるデジタル通貨導入の重要なステップとなる。今回の試験結果を踏まえ、韓国政府は正式なCBDC導入の可否を判断する見込みだ。
中国ではすでにデジタル人民元(e-CNY)が試験運用されており、アジア圏のCBDC開発競争は激しさを増している。欧州中央銀行(ECB)もデジタルユーロの導入を検討している。韓国のCBDC試験が成功すれば、アジアと欧州におけるデジタル通貨の開発競争に影響を与える可能性がある。
また、韓国銀行は最近、ビットコインを外貨準備資産に組み込む可能性を否定しており、IMF(国際通貨基金)の基準に準拠した形でCBDCの運用を進める方針を明らかにしている。
今後の公式発表や技術的な詳細については、随時報告される予定である。