IRSによる仮想通貨市場の未来に向けた新税法
IRS(Internal Revenue Service:米国内国歳入庁)は、2025年からCEX(中央集権型取引所)を対象に仮想通貨取引の追跡を開始する。
税収確保と金融犯罪の抑止を目的としたこの規制は、仮想通貨市場に多大な影響を与えると予想される。2025年から、仮想通貨取引に対する第三者報告義務が導入される。コインベース(Coinbase)やジェミニ(Gemini)といったCEXは、取引情報を新しい納税申告書フォーム1099-DA (※新しい納税申告書)を通じてIRSに提出する必要がある。この制度により、正確な納税申告が可能になり、税務コンプライアンスが強化される。
IRSの2024年6月の報告書では、デジタル資産取引における不遵守を抑止し、投資家が納税義務を正しく果たすことを支援する目的が述べられている。
分散型取引とウォレット間の取引が規制の焦点に
ウォレット間の取引やDEX(分散型プラットフォーム)での取引は、CEXとは異なるタイムラインで規制の対象となる。
これらのプラットフォームは資産を保持せず、取引を促進する役割を担うことにより、DEXの透明性や規制対応が今後の焦点となる。
取引履歴と原価基準の報告義務
CEXは、ユーザーの取引履歴を追跡し、IRSに報告する義務を負い、フォーム1099-DAは、2025年の納税申告書に含められる予定で、購入および販売の詳細が記載される。
また、2026年以降、CEXは原価基準情報の報告も義務付けられる。原価基準は仮想通貨の購入価格を指し、課税対象となる利益や損失を計算する基礎情報として重要である。
ユニスワップ(Uniswap)のようなDEXでは、P2P(ピアツーピア)取引が2027年から第三者報告義務の対象となる。ただし、報告内容は取引総額に限定され、原価基準は含まれない。このルールにより、規制と透明性のバランスが注目される。
ビットコインETFへの報告要件
2025年から、ビットコインETFの投資家も報告義務の対象となり、ETF発行者は、株式売却やファンド内の損益に関する情報をフォーム1099-Bまたは1099-DAで提供する必要がある。
さらに、米国財務省は、これらの規制強化が新たな税金を導入するものではなく、コンプライアンスの合理化とエラー削減を目的としていると明言している。
新制度が描く仮想通貨市場の未来
新しい報告制度は、市場の透明性を向上させるとともに、税収の増加をもたらすと期待されている。
この規制の明確化は、仮想通貨市場に対する信頼性を高め、さらなる発展を促すだろう。その一方で、ユーザーのプライバシー侵害や取引所のコスト増加といった課題も存在する。これらの課題を克服するためには、業界全体での取り組みが必要だ。
IRSの規制強化は、中央集権型取引所から分散型取引所への移行を加速させる可能性があり、機関投資家の参入を促進することで、仮想通貨市場の成熟を象徴する重要な転換点となるだろう。IRSによる仮想通貨取引追跡の強化は、税務コンプライアンスと市場の透明性を向上させる重要な取り組みであり、規制強化を契機に、仮想通貨市場は新たな成長の道を切り開くことが期待されている。