ベネズエラはドル導入に光を当てる
ハイパーインフレと権威主義に悩まされているベネズエラは、国家仮想通貨の普及に最適な候補としてしばしば称賛されてきたものの、仮想通貨導入減少の中で、米ドルに傾きつつあることが分かった。
ベネズエラの楽観主義の背後にある理論的根拠は、ボリバルの価値下落からの保護の必要性と、ニコラス・マドゥロ(Nicolás Maduro)の独裁政権から逃れる手段の必要性と言われる事も。しかし、米国のブロックチェン分析を手掛けるチェイナリシス(Chainalysis)の最新データによると、ベネズエラはラテンアメリカ地域内で受け取った仮想通貨の総額で5位にランクされているものの、世界ではトップ20にも入っていない。
ベネズエラ人は米ドルへのアクセス獲得に高い関心
ラテンアメリカに焦点を当てた同社の2023年世界仮想通貨導入指数は、ベネズエラの状況についての洞察を提供している。
報告書は、困難な政治的背景と十分に裏付けられたハイパーインフレの問題を考慮し、ベネズエラの「unique crypto utility(ユニークな暗号ユーティリティ)」を強調。同国最大の草の根ビットコイングループであるサトシ・イン・ベネズエラ(Satoshi in Venezuela)の主催者であり、ビットフィネックス(Bitfinex)ラテンアメリカ駐在ビットコイン大使であるハビエル・バスタルド(Javier Bastardo)氏は、これらの数字が驚くべきことでもないと考えている。同氏によると、ベネズエラ人は世界準備通貨である米ドルへのアクセスを獲得することに高い関心を持っているという。
同氏は、この国は何年にもわたって国内で事実上のドル化経済に向かって進んできたと主張。ハイパーインフレが広範なビットコインへの移行につながるという説は、彼の見解では不正確という。同氏は、人々はトップ仮想通貨の世界に足を踏み入れる前に、ステーブルコインを使用する可能性が高いことを観察した。しかし同氏は、ステーブルコインはベネズエラによる米ドルの探求における移行段階とみなされている可能性が高いと指摘している。この視点は、ベネズエラのメディアCriptodemia(クリプトデミア)の創設者であり、「My First Days in Bitcoin」の著者であるケビン・ヘルナンデス(Kevin Hernández)氏の視点と一致している。
同氏は、ベネズエラ人は仮想通貨自体に特に興味を持っておらず、代わりに米ドルへのアクセスを求めていると考えており、同国の経済的不確実性により、ドルを容易に入手できるジンリなどの「摩擦の少ない」選択肢への需要が高まっていると指摘している。チェイナリシスは、ベネズエラの仮想通貨経済を推進するもう一つの要因である権威主義的支配も強調しており、報告書の中で、ベネズエラにおける仮想通貨の最もユニークな使用例は、国民がマドゥロ政権の抑圧に抵抗できるようにする能力にあると示唆している。
集中型取引所がラテンアメリカ市場を支配
野党指導者のレオポルド・ロペス(Leopoldo López)氏は、コロナパンデミック下で65,000人の医師に経済援助を提供するため、また、政権に対する抵抗の手段として仮想通貨が使用された例を挙げて証言している。
バスタルド氏もヘルナンデス氏も、仮想通貨は政府によって厳しく管理されている経済において代替手段として機能する可能性があるものの、国民による実際の利用は依然として限定的であることを認めている。両者の主張は変わらず、人々はただお金を探しているだけだとのこと。この点を強調するために、バスタルド氏は、チェイナリシスの報告書で言及されている個人の92.5%が集中型取引所を使用して仮想通貨にアクセスしていることを強調しており、人々は主にドルにアクセスする便利な方法を求めていると指摘している。
チェイナリシスが明らかにしたように、集中型取引所の利用率の高さは、ラテンアメリカにおける広範な傾向の一部である。世界平均では48%であるのに対し、この地域では60%以上の人々が集中型取引所を選択している。
ラテンアメリカの数カ国で運営されている取引所、Buda.comの最高運用責任者であるジャズミン・ホルケラ(Jazmín Jorquera)氏は、集中型取引所は簡単で信頼性の高いエクスペリエンス、優れた流動性、不可欠な信頼要素を提供すると指摘。大陸における犯罪行為に関する一般的な懸念を強調し、P2P(ピアツーピア)交換のようなプラットフォームの魅力を薄めている。同氏は、多額の現金を持ち歩くことへの嫌悪感を強調し、特にベネズエラでは日常生活費の支払いに多額の現金を使う国民性垣間見られる。